君は空を飛べない【呪術廻戦】 (ページ11)

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１０話ページ11

悟は、殺されたのに生きて姿を現した。

「こいつら、殺すか？」

そのときの盤星教信者の拍手の音が耳にこびりついている。

「いい、意味がない」

私は他にも色々言ったが自分の声が聞こえないような錯覚に陥っていた。パチパチ、パチパチパチ。白い服の信者たちが理子ちゃんに拍手をしている。禪院甚爾に殺された、罪のない理子ちゃんに。

「意味ね。それ本当に必要か？」
「大事なことだ、特に術師にはな」

そうだ。特に私たちにとって意味のある行動をとることは何より大事だ。
そうなのだろうか。本当に？

******

「夏油、今年の交流会さ、直哉さん結局いないんだって」
「そうなのかい」
「うん、入学自体やめてたんだって」
「ふーん」
「私今度一級審査の任務なんだ」
「そうなんだ、気をつけて行ってらっしゃい」
「ねー夏油、夏油が特級になったら休暇取って呪霊で国内旅行しようよ」
「いいね、またどこ行くか決めようか」

雨が降っている。教室は湿気が多くて居心地が悪い。天気だから仕方がないけれど。
悟は任務で硝子も今は治療に行っている。授業中でもいつ呼び出されるか分からない緊張感。繁忙期はどうしても落ち着かなかった。

「悟お帰り、どうだった」
「あー、雑魚！超ヨユー、２級だった、こんなことに俺使うなっつーの」
「それはよかったじゃないか。それはそうと悟、一人称俺はやめた方がいいと言っただろう」
「オエー、正論ウザ！てか肉まん買ってきたけど食う？」
「食べる！ありがとう」
「私はいいかな」
「じゃあ俺２個食う！」

昼時だったが不思議と腹が空かなかった。これくらいの時期から食が細くなっていった。
Aと悟と硝子は相変わらずだった。

「傑！A！悪いが今から任務だ！」
「分かりました、どこでですか？」
「少し遠出になる、泊まりだから今から数日分の荷物を用意して来い」
「早く終わらせて帰って来いよ！」
「ああ、頑張るよ」

任務地はドのつく田舎だった。見渡すと老人ばかりで、こういう村はあまり好きではなかった。着くころには夜になっていた。
その夜は夢を見た。悪い夢だった。悟が信者を皆殺しにするのをただ見つめる夢。パチパチという音は最後の１人が殺されるまで続いたが、そこで目が覚めた。雨が部屋の窓を叩いていた。パチパチ。同じ音だった。
信者を殺さなかったのは正しい選択だった。呪術師たるもの、力を持たない弱者に当たるのは必ず間違いだ。そうに違いない。そうに違いないのだ。(本当に？)