君は空を飛べない【呪術廻戦】 (ページ2)

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１話ページ2

「夏油ってAのこと好きなの？」

一年の夏、体術の訓練で悟と対戦し怪我をした私を治しながら硝子がこう聞く。

「硝子？急にどうしたの・・・」
「いやもうめんどくさくて」
「めんどくさい？」

バレてないと思ってたの。五条も多分気付いてるよ。
そう言われると一気に鼓動が速くなる。

「ハハ、図星かよ。早くね？まだ会って３か月とかじゃん」
「知らないよ。私も今気づいたんだから・・・」
「ウケる、別に応援しないけどね。勝手しなよ。はい終わり、行った行った。」
「・・・Aには」
「別に言わないよ、じゃあね」

医務室を出ても顔のほてりが収まらない。
一目惚れか？私が？
好きになった理由も具体的には全く思い当たらない。こんなことは初めてだ。

彼女の「ねぇ夏油。」と呼ぶ声が聞こえた気がして振り返ったが、誰もいなかった。
幻聴だと気付いた途端に恥ずかしくなってしまって、運動場まで全力で走った。

「ねぇ夏油、後で３人でコンビニ行かない？硝子のアイスとタバコも買ってあげよ」
「ああ・・・ああ、そうだね、マイルドセブンでいいかな」
「いいんじゃない？五条～！夏油も行くって！もう準備できたの？じゃあ私たちも今から行く！」

彼女の横顔をきれいだと思った。
何だかいつもよりいい匂いもする。

何だ、ずいぶんキモいな、私。

******

「悟、そんなに入れちゃ駄目だろ」
「いーじゃん、俺のおごりになっちゃったし」
「はぁ、悟・・・」
「ねぇ五条、これも入れていい？硝子に」
「ハハ、酒じゃん！」

悟の名前を呼ぶAの声。ちょっと嫌だな。ああ、友達に嫉妬して、最低だな。

「A、もういい？会計するって悟が」
「うん、いいよ」
「・・・Aはさ」
「ん？」
「悟のこと好きなの？」

ほぼ無意識だった。そうでないだろうということは分かっていたが口が勝手に開いた。

「ハ？それは絶対ない。天地がひっくり返ってもない」

決まりきった答えだったが、それで妙に安心した自分に驚いた。

「・・・じゃあ、好きな人もいないの」
「うん、いない」

ああ、いないのか。ふーん？
彼女の言動に一喜一憂する自分が滑稽だ。

「そうなんだ」
「何で急に？」

そうだよな。凄い不自然だったし。理由なんか私も分からない。

「・・・いや？私たち一切恋バナしないから、してみようと思っただけ」
「ふーん。あ、五条終わったね。帰ろ」
「そうだね」

特に私の態度を気に留めることもなく彼女は私に背を向けて帰路に着いた。