僕が本を読む理由ー6 ページ7
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何故笑ったのか分からず、眉をひそめ首を傾げる。するとあのね、とカウンターの向こうからサーヤが身を乗り出した。彼女からにしては珍しく、目鼻の先まで近づくと、肘をついて再度目線を合わした。
「なんか嬉しいなって思って。ほら、あんまりこんな風にのんびりすることってなかったでしょ？」
「ああ、確かに…なんだかんだどこかへ出かけたり、誰かが居たりする事が多かったからな」
言われてみれば、こんな穏やかな、ふたりきりの昼下がりの休日は、久しぶりかもしれない。
「ね。だからこんなのもたまにはいいなって思ってたら、レイヤくんと目が合って…双子で何か通じたみたいで、嬉しくて」
はにかむ君が本当に嬉しそうで、僕は今まで考えていたこと、返そうとした言葉を忘れた。白紙になった心に水筆で色を落としたように、じんわりと愛しいとかそんな暖かな想いが染みでてくる。
同時に、ここ一週間ずっと探していた片鱗を掴めたような、何かが腑に落ちたような気がした。
「…サーヤ。先週、僕が話したこと、覚えてる？」
今なら言葉にできるかもしれない。少女の、相変わらずまっすぐな瞳を覗き込んで、僕は問いかけた。
「え？…うん、覚えてるよ。どうして本を読むのか、だよね」
「ああ。ここ一週間、ずっと考えてたんだ。なかなか答えが出なくて…でも、今見つけた」
何も言わないまま、サーヤの瞳が瞬く。促されるように、僕はゆっくりと息を吸い込んだ。
「…きっと、僕が本を読むのは…この世界をもっと知りたいから、なんだと思う。君が愛しいという、この世界を」
君が大切にする、今のような些細なことが存在しているこの世界。愛しい君が愛おしむ世界を、僕も同じように愛したいから。いつか、サーヤだけでなくー他のものも、愛せるように。
だから、沢山の人の想いが込もっている本を読むのだろう。魔界では得ることの出来なかった、愛を求めて。
「…まだ僕はあまりこの世界を知らないみたいだ。本だけじゃなく、君も教えてくれる？」
僕は微笑を浮かべ、君の両手をとった。君は先程よりも目を丸くすると、ぎゅっと手を握り、やがて満面の笑顔になる。それは、安心したような、嬉しいような…僕が君と出会ってから初めて見る笑みだった。
「…もちろん！」
約束、守ってくれてありがとうーそう言う君の手を、僕は優しく握り返した。
fin*
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桃(プロフ) - ゆうたんさん» ありがとうございます！そう言っていただけて嬉しいです。更新頑張ります！ (2016年7月28日 21時) (
レス) id: 5aa2eaac6e (このIDを非表示/違反報告)
ゆうたん - とってもおもしろいです！再新頑張ってください(^▽^)/ (2016年7月26日 13時) (レス) id: 9ccd65c474 (このIDを非表示/違反報告)
桃(プロフ) - チカさん» ありがとうございます！21巻は読んでていろいろと大変でした…。更新頑張ります〜( ´ ▽ ` ) (2016年6月21日 20時) (レス) id: 5aa2eaac6e (このIDを非表示/違反報告)
チカ(プロフ) - 高校合格おめでとうございます。21巻は確かにヤバかったですね！ゆっくりでも良いので更新頑張ってください(*^^*)応援してます！ (2016年6月21日 6時) (レス) id: b0a8b8ef26 (このIDを非表示/違反報告)
桃(プロフ) - ゆうさん» 返信遅くなりすみません。コメントありがとうございます！読みやすさは個人的にはまだまだですが、そう言っていただけると有り難いです(o^^o)黎紗好きさん！！！周りにいないので本当に嬉しいです（ ; ; ）ふたりいいですよね…！続きの執筆頑張ります！ (2015年5月24日 12時) (レス) id: 5a1aaa4d08 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：桃 | 作成日時：2015年4月27日 0時
