◆マネゴト。ー5 ページ17
.
精気を、吸う。その意味がわかるまで数秒を要した。
サーヤが実際に精気を吸うところを見たのは、この前ーユリやアルヴィスのときが初めてだった。今までは精々下級悪魔だったり、上級悪魔でも吸うその瞬間は見たことがなかったのだ。
だから、初めて見た衝撃は存外大きく、また僅かながら感動もあったのだと思う。
あんなことをするなんて、と思うと同時に、自分も同じものだと考えて嫌気がさした。
けれど、あの光景が忘れがたいものだったのも事実で。ふとした瞬間に頭をよぎることは数回あった。
その行為を、自分たちもー…？
「…いや」
まっすぐな視線から隠れるように瞼を閉じて、首を横に振る。胸に手を当て一度しゃくりあげた。
「悪魔と同じことなんて、やりたくないよ…」
再び涙がとめどなく流れ出す。いつのまにか肩が震え出して、レイヤに掴まれていないと崩れそうだった。
(もし、そんなことして本当に精気を吸えたら…)
悪魔であるという証明ができてしまう。そうしたら、もうどうやって生きていけばいいのかわからない。人とは異なる存在でーどうやって、みんなの前で笑えるのか。
そんなこと、できるわけがない。
「じゃあこれから僕たちはどうするんだ？ずっと、こうやって半端なままで生きていくのか？」
厳しいレイヤの言葉に目を見開く。
おそらく言っている本人もまだ答えが出ていないままなのだろう、瞳が戸惑いに揺れていた。
「いつかは、向かいあわなくちゃいけない日が来るんだ…だからそれを延ばしたところで、結果が変わるわけでもない」
「そんなの…」
まるでこちらが逃げているような言い方じゃないか。
「それなら、今やっても同じことだろ？」
レイヤの言葉の端々から、堕ちそうならいっそ堕ちてしまえというような、諦観が伝わってきてサーヤは悲しくなった。
この双子の弟はー今までなにをどれだけ手放して、諦めてきたのだろう。
依然として首を縦に振らないサーヤにしびれを切らしたレイヤが、手首を掴んだまま押し倒した。サーヤは衝撃を覚悟したが、思った外ふかふかでこれが布団の上だということに気づく。
「君がやらないのなら、僕がやる」
身体にレイヤのぬくもりと重みがのしかかる。だんだんと近づいてくるその手がサーヤの髪の毛に触れる。サーヤは潤んだ目を逸らさずにレイヤを見つめた。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 4人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
桃(プロフ) - ゆうたんさん» ありがとうございます！そう言っていただけて嬉しいです。更新頑張ります！ (2016年7月28日 21時) (
レス) id: 5aa2eaac6e (このIDを非表示/違反報告)
ゆうたん - とってもおもしろいです！再新頑張ってください(^▽^)/ (2016年7月26日 13時) (レス) id: 9ccd65c474 (このIDを非表示/違反報告)
桃(プロフ) - チカさん» ありがとうございます！21巻は読んでていろいろと大変でした…。更新頑張ります〜( ´ ▽ ` ) (2016年6月21日 20時) (レス) id: 5aa2eaac6e (このIDを非表示/違反報告)
チカ(プロフ) - 高校合格おめでとうございます。21巻は確かにヤバかったですね！ゆっくりでも良いので更新頑張ってください(*^^*)応援してます！ (2016年6月21日 6時) (レス) id: b0a8b8ef26 (このIDを非表示/違反報告)
桃(プロフ) - ゆうさん» 返信遅くなりすみません。コメントありがとうございます！読みやすさは個人的にはまだまだですが、そう言っていただけると有り難いです(o^^o)黎紗好きさん！！！周りにいないので本当に嬉しいです（ ; ; ）ふたりいいですよね…！続きの執筆頑張ります！ (2015年5月24日 12時) (レス) id: 5a1aaa4d08 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：桃 | 作成日時：2015年4月27日 0時
