僕が本を読む理由 ページ2
.
ーどうして君は本を読むの？
ふと気になって唐突にそう聞いたことがある。
楽しそうにページをめくっていた君が、少し驚いたように顔を上げた。
ーうーん…。物語の世界に行けるから、かな。わたしの知らない世界でわたしの知らない人達が紡ぐ話。それを読むことでわたしもその世界の住人になれたような気がするから。それって素敵なことじゃない？
いきなりの質問にもそう丁寧に答えた君は、レイヤくんは？と首を傾げる。
ー僕は…。
どうしてだろう。こっちから聞いたくせに自分はなかなか答えれない。
言葉を探して口を動かすが、どうにもぴったりくるものが無くて結局口ごもってしまった。
ー秘密。
これじゃあんまりフェアじゃないな、と分かっていながらもそう言うに止まる。
ーえ…。そっか。
知りたいはずなのに無理に聞くのは悪いと思ったのかあっさりと引き下がる君。
その瞳にどこか寂しげな色が浮かんでいて、僕はまたやってしまったと後悔する。
君はいつも僕のことを知りたいと思っているのに君の優しい気遣いがそれを阻む。
そしてそれに甘えてしまう僕は弱虫であり、卑怯者だ。
本当は君に僕の暗いところを知られたくない、という僕の我儘だというのに。
これ以上君に僕の我儘を押し付けたくなくて、僕は言葉を変えた。
ー…嘘。実は、あまり分かってない。
正直に、ありのままを吐き出す。
ーごめん。一度考えてみるよ。
僕が隠さずそう言ったからか、途端に君は瞳を輝かせると、嬉しそうにはにかんだ。
ー分かった。じゃあ見つかったら教えてね。
そんな約束をしてから、一週間が経つ。
僕は精一杯考えていたが、未だに答えを出せずにいた。
ーそもそも、そんなこと今まで考えたことが無かったというのが本音だ。
じゃあ何故サーヤにそんな質問をしたのかと問われても困る。気紛れ、だとしか答えられない。
だから逆に聞かれても答えられなかった。
「…気がついたら本を読んでいるようになったしな…」
そこに本があるから、なんてどれだけ哲学的なんだと自分でも頭を抱えたくなる。
唸りながら突っ伏すと、冷んやりとした机が頬に当たり、こんがらがった頭の熱を奪っていく。
その心地良さに、僕はゆっくりと目を閉じた。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 4人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
桃(プロフ) - ゆうたんさん» ありがとうございます！そう言っていただけて嬉しいです。更新頑張ります！ (2016年7月28日 21時) (
レス) id: 5aa2eaac6e (このIDを非表示/違反報告)
ゆうたん - とってもおもしろいです！再新頑張ってください(^▽^)/ (2016年7月26日 13時) (レス) id: 9ccd65c474 (このIDを非表示/違反報告)
桃(プロフ) - チカさん» ありがとうございます！21巻は読んでていろいろと大変でした…。更新頑張ります〜( ´ ▽ ` ) (2016年6月21日 20時) (レス) id: 5aa2eaac6e (このIDを非表示/違反報告)
チカ(プロフ) - 高校合格おめでとうございます。21巻は確かにヤバかったですね！ゆっくりでも良いので更新頑張ってください(*^^*)応援してます！ (2016年6月21日 6時) (レス) id: b0a8b8ef26 (このIDを非表示/違反報告)
桃(プロフ) - ゆうさん» 返信遅くなりすみません。コメントありがとうございます！読みやすさは個人的にはまだまだですが、そう言っていただけると有り難いです(o^^o)黎紗好きさん！！！周りにいないので本当に嬉しいです（ ; ; ）ふたりいいですよね…！続きの執筆頑張ります！ (2015年5月24日 12時) (レス) id: 5a1aaa4d08 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：桃 | 作成日時：2015年4月27日 0時
