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貴利矢はそう言うAのヘルメットを乱暴に外すと、そこには予想通りの驚いた表情があった。
「ほら、寄ってってやるから。
早く鍵開けてちょーだいっ」
そう軽いノリで言いながらバイクを降りる貴利矢と降ろされるA。
二人でエレベーターに乗り込み、部屋の鍵を開けるとなんの躊躇いも無く颯爽と入ってきた貴利矢。
Aが家に入ってすぐに外から一発の爆発音が響いた。
「あっ、始まっちゃう!」
Aは急いで西側の窓のカーテンを開けると、ソファの上のクッションを1つ貴利矢に放り投げた。
「うぉっ!おま、雑!」
「ごめーん(笑)」
Aは背中を向けながら貴利矢にそう言うと、麦茶が入ったコップを2つ持って来た。
「どーぞっ」
「どーもっ」
それから程無くして、夜空に咲き始めたいくつもの色とりどりの花火。
窓枠いっぱいに埋め尽くされる、鮮やかな閃光に二人の顔が照らされる。
「なんかこーゆー見方もいいね。面白い」
「ほんと?良かったぁ」
隣街の公園で行われる祭りの、締めくくりとして打ち上げられる花火。
どこぞの花火大会に比べたら、ほんの数分間だし、スケールだって小さいのに…
こんなにも楽しく感じるのはきっと“ 君 ”がいてくれるから。
「あ!今のハートだよね!?」
「逆さまのな(笑)」
「…お尻じゃん(笑)」
「こら、そーゆー事言わないのっ(笑)」
お酒も入ってないのに、それだけでけらけらと笑い合う二人。
まさに童心に返るという表現がぴったりだ。
25歳のくせに…なんてそれすらもお互い様で。
笑いが止んだ後は、二人とも残り僅かな花火を名残惜しむように夢中で見ていた。
そんな中でAはバレないように、食い入るように花火を見つめる貴利矢をちらりと盗み見る。
おおっ、とかうわぁ、とか時々小さな声をもらしながらも楽しそうに笑う横顔に、大きな安心感を抱いた。
淳吾君との一件があってから、ふとした時の貴利矢の表情に、ずっと翳りが消えないことに危機感を持っていたA。
今でもずっと自分を責め続けているのだろうけど、こういう時には自然と楽しそうに笑ってくれている。
…今は、それだけでいいよね。
Aは心の中でそう唱えると、目線を花火に戻した。
ラストスパートのような連続した花火から、最後に大きな錦冠が3発打ち上げられ、フィナーレを飾った。
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くっきーー(゚レ゜)(プロフ) - サクラさん» 読了ありがとうございます(*^^*)自分でもいいストーリーが書けたと思っていたのでキュンキュンしてもらえて嬉しいです♪(笑)また第3章でもお待ちしてます☆ (2017年9月21日 15時) (レス) id: 81b45456c3 (このIDを非表示/違反報告)
サクラ(プロフ) - ツルギのお話読みました!本当もう期待以上にキュンキュンしました!!ありがとうございます (2017年9月20日 15時) (レス) id: fead634d8e (このIDを非表示/違反報告)
くっきーー(゚レ゜)(プロフ) - 封雲夜音さん» そうですか。ありがとうございます♪ では、第3章にて^^ (2017年9月20日 13時) (レス) id: 81b45456c3 (このIDを非表示/違反報告)
封雲夜音 - いいえ、ただ確認したかっただけです。大我の話、待ってますね。応援してます。 (2017年9月20日 12時) (レス) id: bcd44cf1b6 (このIDを非表示/違反報告)
くっきーー(゚レ゜)(プロフ) - 封雲夜音さん» そうですね。遅くなっているのは申し訳ないのですが、今いただいているリクエストは移行後に書くとお知らせでもお伝えしました。何か不都合がありましたか? (2017年9月19日 21時) (レス) id: 81b45456c3 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:くっきーー(゚レ゜) | 作成日時:2017年8月24日 17時