近くて遠い K.Tsuji_04 ページ10
「お待たせ」
『おう』
本当にシフトの時間になるまでお店で待ってくれたおにぃに声をかける。
「どうしたの？今日に限って待っててくれるなんて」
『たまにはええやろ、それに...』
「それに？」
『こうやって帰れるん、久々やし』
そうだ、あれ以来。
あの光景を見てからおにぃと帰ることはなくなった。
『今まで何をするにも一緒がいいって言ってたお前が一人で帰るとか言い始めたから心配やったんやで』
『なんか気に食わんこととか言ってしもたんやないかとか』
...おにぃはどこまでも優しい。
だから優しくしないで欲しかった。
「...だって、私以外に帰る人いたじゃん」
ダメだふてくされてしまう。
私はその子みたいに可愛くもないし大人っぽくもなれない。
いつまでたっても私は子供だ。
『あーそういうことか』
『その子がおるから気を使ってくれてたんやな、笑』
そんな風に笑わないでほしい。
せめて今だけは自分のことを見てほしい。
『でも、その子とはもう付き合ってないで』
「えっ？」
『告白されたから付き合ってはみたんやけど、やっぱり忘れられんくてな』
『好きな子おるから、って言って別れたんよ、笑』
そう言って急に立ち止まるから慌てて自分も立ち止まる。
おにぃが優しい顔で自分を見つめている。
『A』
『もう一人で帰らんと一緒に帰ろうや』
「それはお兄ちゃんとして...ってこと？」
そう聞く私に
『ちゃうで』
すぐにそう答えたおにぃの目が
愛おしい人を見つめるような瞳で
私はかすかな期待を抱いてしまう。
『俺はずっと前から異性としてしかみてへんから、Aのこと』
『もう避けんとってくれ、そんなハート強ないねん』
『俺と付き合ってほしい』
そう言って
長年の気持ちを伝えようとするかのように優しく抱きしめられた___。
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初めまして。
まるまると申します。
お話を楽しみに来てくださりありがとうございます。
気ままに更新していきますが私の書くお話が皆さまの息抜きになれましたら幸いです。
まるまる
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作者名：まるまる | 作成日時：2022年5月31日 1時
