Assortment of sweets (ページ35)

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出会いは喫煙所 S.Moriyama_03 ページ35

「はぁー...」

久しぶりにやってしまった。

今日は渡すはずだった小道具を反対側の袖に置いてしまっていたことに本番中に気づいた。

幸い、盛山さんがそれとなく舞台上で話を繋いで間を持たせてくれたことで
小道具を持って袖から袖まで移動するのにそれとなく誤魔化すことはできた。

あの喫煙所にいるかな。
もしいたらちゃんと謝ろう。

そう思って喫煙所に入ると

『おう、Aちゃん』

案の定盛山さんが先にタバコを吸っていた。

「盛山さん、さっきは本当にすいませんでした」

『何がや』

「いや明らかに小道具が袖にないことに気づいて話繋いでくださってましたよね」

『あー、そうやったかもしれんなー』

そう言ってプカプカと煙を吐き出す盛山さん。

『でもお客さんはきっと気づいてないでそんなこと』

「でも、」

訴える私に盛山さんは

『俺はなんとも思ってへんから、気にせんでええよ』

そう言いながら頭をポンポンと撫でられる。

その撫でられている手の温もりが優しくて温かくて動けなくなる。

でも不思議と盛山さんに撫でられるのが嫌ではなかった。

『...嫌がらへんのやな』

そう言って私のことを見つめる盛山さん。
だけど一瞬目をそらしたかと思ったら

『なあ』

『野村とは付き合ってるん？』

え。
のむくん？
なんで盛山さんが私とのむくんが付き合ってると思っているんだろう。

「いや付き合ってないですよ」

「のむくんは私が芸人だった時の同期で唯一の友達だったんです」

『そうなんや...よかった』

ホッとした様子で胸をなでおろす盛山さん。
...もしかして。

「あの時盛山さんが喫煙所に入らなかったのって私とのむくんが付き合ってると思ったからですか？」

それを聞いた盛山さんはわかりやすく動揺していて

『いや聞くつもりはなかったんやけど、なんか仲よさそーに話しとるからなんか入りづらくて...』

ぽりぽりと自分の頬をかきながら答える盛山さん。
気のせいか長髪から見える耳もちょっと赤い気がする。

『でもそういう感じやないならええわ...』

『あのさ、もっとAちゃんともっと仲良くなりたいんやけど...ええかな？』

私も盛山さんのこともっと知りたい。
この喫煙所だけじゃなくて色んな場所で一緒に過ごしてみたい。
素直にそんなことを思った。

「いいですよ...！」

『ほんまか！じゃあ今日この後飲みに行かへん？』

「はい！」

そう言って二人で喫煙所を出た___。