Assortment of sweets (ページ19)

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スーツのあの人 K.Kawanishi_06 ページ19

無事に3回目公演も終了しそれぞれの楽屋の撤収作業をしていた。

「あれ？」

テーブルの上のそこには黒いカバーが掛けられている何かが置いてあった。
中身を確認するためにファスナーを開けてみると

「これ、川西さんのだ」

それは川西さんがいつも漫才の時に着ているスーツだった。
きっとさっきの出番終わりに忘れていったのかもしれない。

「届けないといけないけど...」

川西さんの連絡先を知っているわけでもないので出番終わりにどこに行かれたのかは知らない。
でもないと困っているよな...そんなことを考えていると

「Aー、ってそのスーツ」

たまたま別の部屋の撤収作業をしていた健太くんが通りかかる。

「届けてあげないの？」

「でも、次のお仕事どこに行ったのかわからないから...」

そう健太くんに言うとニヤリと笑って近づいてきた。

「さっきたまたま聞こえたんだけど出番終わったら本社で打ち合わせって言ってたぞ」

「本社か...」

それならここからそんなに遠くないしもしかしたらまだ打ち合わせ中でいるかもしれない。

「後の片付けはやっとくから行ってこいよ」

「え、いいの？」

「そこまで大掛かりなものはないし、それにそのスーツがない方が一大事なんじゃないか」

「きっと川西さんもお前に届けてもらったら嬉しいんじゃない？」

そうニッコリ笑って言う健太くん。

「そ、そうかな」

「行って来い、A」

そう健太くんに言われてポンと背中を叩かれた。

そうだ、きっとこれは散々私を見放してきた神様が与えてくれたチャンスかもしれない。
私は急いで本社に向かって走った__。

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「ふう、着いた着いた」

普段仕事で廊下や舞台やらを走り回っているからかそんなに息が上がらずに本社に着けた。

「ん？あっ！」

本社で打ち合わせとは聞いていたがどこの部屋でやるかは聞いていない。
だからこの大きな本社をくまなく探し回って川西さんを探さなければいけない。

「仕方ない、一部屋ずつ探していくか...」

そう言って川西さんのいる楽屋を探そうと歩き始めたその時

『Aちゃん』

あの時と同じ優しい声で私の名前を呼ぶ川西さんがいた。