そして、彼は考えるのをやめました。5 (ページ29)

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Episode224 ページ29

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［そして、迎えた本番当日］

特に何のトラブルもないまま、時が過ぎ、
劇が本番までやってきた。

看板には『演劇部発表会ピーターパン』と
体育館の外のドアに掛けられてあった。

「どうしよう…ドキドキしてきちゃった…」

「大丈夫！あれだけ特訓したんですから！
それに私が着いてます！」

「小雪ちゃん……うん！」

緊張して来た夏美を励ますように、
手を握って頼もしい言葉を掛ける小雪に、
元気よく返事をする夏美。

このままトラブルさえ無ければ、劇は成功となりそうだ。

「さぁ、行くわよ！幕を開けて！」

弥生からの指示でブー、とブザー音が鳴り、
明るかった体育館も一気に暗くなる。

そして、幕が開けられた。いよいよ本番だ。

「(こ、こらぁ…！落ち着け私の心臓！
最初のセリフはなんだっけ……)

おお、ピーターパン…きっと来てくれると思っていたわ…」

手を握って鳴り止まない心臓に、
夏美は手を握って自分自身を落ち着かせ、
最初のセリフを小声で言う。

「姉ちゃん…！」

「夏美さん…！」

「夏美…」

「ゲホ…ゲホ…！」

そんな夏美の姿を冬樹とモアは近くで見て、
ギロロ、タママ、ドロロ、ギララは
人に見つからないように見守り、

ケロロはまた前と同じ格好をして、
舞台裏で咳き込みながら見ていた。

「(やって見るわ…ピーターパン…。
私、自分を信じて飛んでみる…)

………っ！私はウェンディよ！」

自分に決心がついて、いざ、舞台から夏美が出て来る。

夏美はチラリと観客の方を見ている。
そこには、サブローの姿があった。

「(ヒィィッ！？サブロー先輩！？)」

「ハハッ！」

夏美の想い人でもあるサブローを見付け、
顔を真っ赤にする夏美に、
目が合った彼女に微笑みかけるサブロー。

夏美の心拍数が異常に高まるその瞬間であった。

「ウェンディ…… (夏美さーん!)」

小雪が小声で夏美を呼ぶと、
夏美はロボットのように振り返る。

「おおおお…ぴ、ぴーたーぱーん。
きっときてくれるとおもっていたわー……！」

なんと、最初に演技をやった時より、
酷くなってしまった夏美の演技に、

周囲は勿論、舞台裏の人たちも唖然として、
弥生は持っていた台本を落としてしまった。

「こ、このとき！ときとき！き……キャーーーッ！！」

「姉ちゃん…」

「ていうか、挙動不審…？」