そして、彼は考えるのをやめました。5 (ページ26)

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Episode221 ページ26

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「あぁ！姉ちゃん下手だったんでしょ？」

「うぅ…！」

「昔からお芝居って苦手だったんだよねぇ…」

見事に冬樹から『ヘタ』という言葉が、
夏美の心情を突き抜ける。

困ったように言う冬樹。悪気は無いみたいだ。

「ほぅ…。スポーツ万能、成績優秀。
腕っぷしも強い夏美殿がお芝居だけは……
ヘタ、なのでありますか」

「…意外だね」

明らかに『ヘタ』という言葉を強調させて、
怪しい笑みを浮かべて言うケロロに、
その言葉が石となって夏美の頭に乗っかる。

ギララも珍しく、夏美の苦手分野があることに、
冷静に意外だと言っていた。

ケロロの言葉に夏美は苛立ちを感じたようであった。

「ゲロ」

「どうせ私はお芝居に向いてないわよ！もうやめる！」

その苛立ちに夏美はケロロを足で踏む。

劇に嫌気が差してしまった夏美は、
目に涙を浮かべて腕を組んで諦めようとしていた。

「堪忍ね…。私、夏美さんの気持ちも考えず、
勝手に引き受けちゃって…」

「え…？」

「私…今までお友達とお芝居したことなんて無かったから、
夏美さんと一緒にやれたらきっと楽しいだろうなぁって、
さっきはすごく嬉しくて…」

劇をやりたくない夏美の気持ちが伝わった小雪は
申し訳無さそうに夏美に謝る。

無理矢理笑顔を作って、寂しそうに言う小雪に、
夏美は黙って彼女を見る。

「……でも、もう良いの！
私1人で何とかやってみます！」

「小雪ちゃん…」

「ゲロゲロ…小雪殿の気持ちを踏みにじり、
夏美殿は逃げるつもりでありますなぁ？

ゲコッ！？ゲェッ！ガァッ！」

「あーあ…」

「…隊長…」

夏美に踏まれながらも嫌味を言うケロロに、
夏美はお構いなしに攻撃をしていく。

夏美に攻撃されて壁に張り付いたケロロに、
冬樹は驚いて見て、ギララはなんの反応もせずに見ていた。

「小雪ちゃん！やっぱり私やってみる！」

「ほんとですか！？」

「姉ちゃん！」

「まぁ…ちゃんと練習すれば…何とかなるかな…。
あはっ、あははっ」

心配そうな顔で言う冬樹に、苦い笑みを零して笑う夏美。

こうして、劇の成功のためにも、
夏美と小雪は劇の練習へと取り掛かった。

＿＿＿＿＿＿＿＿

「『ほら、ウェンディ。空を飛ぶなんて簡単だろう？
君も思い切って飛んでご覧よ！』」

「『まってー、ぴーたーぱーん。
わたしにはむりよ。ここわいわー』……うぅ」

［やっぱ棒読みじゃん］