黒猫 (２) (ページ3)

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それからしばらくはずっと家の中で過ごしていた。

テレビをつけても面白くなんてなく、かと言って話し相手になってくれるような友達も身内もおらん。

ずっとベッドの上で過ごせたらええのに、と思いつつも、腹は減るし、トイレも行きたくなる。

必要最低限の事のためだけに動く生活はそれでも、意外と快適であって、面倒なことは何もなかった。

ヤマさんと、シゲとは口をきかないわけでもなく、仲良くおしゃべりするわけでもなかった。

ヤ「なぁ、A、お前どうするんや。…………せっかく、シゲがプロポーズしてくれたんやろ。なんで受けへんのや」

2人きりの部屋で、ヤマさんがタバコを吸いながら話し始めた。

貴「……………怖いねん。うち、人生の中でいいことより悪いことの方が多かったやろ。望の事だって、私が壊してもうた。父親はまだ追ってくるし…………っ、……………」

久しぶりの、涙やった。

頬を伝った涙の温度で、あぁ、私も生きていたんだ、と再確認した。

貴「………………やって………っ、うち、シゲの事っ、……………ほんまに、ほんまにっ、………最初の時から好きやってん………っ、」

ヤ「……………A、」

貴「……………ヤマさん、仕事、紹介して。ここでてくから。シゲには………言わんといて。シゲがっ、…………ちゃんとした仕事に就いて…………、素敵な人と結婚できるようにっ、…………応援してあげてほしいっ、…………」

うちも、ヤマさんも、シゲと結婚するのが一番いいつてわかっとる。

でも、ヤマさんはそれ以上、私に何も言わんかった。

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