【第五人格】絵描きは占い師を描きたい！【イライ・クラーク】 (ページ25)

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▽痛みと恐怖ページ25

「ちょこまかと鬱陶しい！」

『いてっ』

次に殴られて、やっと負傷状態になった。

それと同時にじわりと痛み、血が滲む。

それは、"私"の恐怖を引き立てるにはとてもいいものだった。

手足に巻かれた包帯、逃げるようにつけたマスク。

苦しくて仕方がない呼吸と、覚束ない足元。

痛みが体を支配する。

ただ逃げろと脳が叫び続ける。

助けてという言葉を詰まらせる首元。

方向が不安定で、脱出ゲートの方角さえ見失った。

何より曲がれない、後ろを振り向けない。

巻き戻ることは許されない。

血を抜き取って、真っ白になった私の死体が眼に浮かぶ。

やめろ、思い出すな、今の俺は一体なんだ。

目を覚まそうとした時、大きな鐘の音と共に、

俺の体は地面へと倒れ込んだ。

「全く…馬鹿にするからですよ！」

『………。』

椅子に縛られる、そうなると余計思い出す。

縛られた、逃げられない。

あの眼に映る、熱された赤い刃。

「ちょっと、私の話聞いてるんですか？」

『ッ…聞いてます、聞いてるから！
ちゃんと聞いているから殴らないで！』

目の前の背丈の高い男が何を言っているかなんて聞こえない。

でも重なってしまう。

髪を引きずられ、無理矢理に顔を合わされて、

そして私より背丈の高い男は私に聞くのだ。

"俺の話を聞いているのか"と。

それに私は震えて答えるのだ。

"聞くから殴らないで"と。

昔から続く、逃げるための言葉。

泣きわめくことさえ許されないから、

歯を食いしばって痛みを堪えなければいけない。

不安に駆られていれば、真っ黒なインク液みたいな何かが、

私の体を包み込んんで、気がつけば納棺師の腕に抱きしめられていた。

「ナイスだイソップ！
さぁ早く皆でゲートに急げ！」

震える手足を動かし、カートの声に従って、

イソップさんに支えられながらも脱出した。