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といっても、私は本来この街の人間じゃない。
受験で第一希望の高校に落ち、滑り止めで受けた高校は地元から電車で二時間離れたこの街にあった。
そして知るんだ。この街の異常さに。
もっとよく調べればよかった。そう後悔した時には遅かった。
――――…朝には酒に酔い潰れたサラリーマンが道端で寝ている街。
夕方のチャイムが鳴ると同時にすれ違う、派手なドレスと香水に身を包んだ女達。
そして夜になると鼓膜をぶん殴ってくる怒号、爆音、騒音。
我が物顔で道路を走る族や、イキがってる馬鹿な不良共。
そんな奴等を、何を勘違いしてるのかカッコいいとキャーキャー騒ぐ女達。
力でねじ伏せ暴走する街。
痛みに麻痺している子供。諦めた顔の大人。
今だってそうだ。
よってたかって殴り付けて、それに快感を覚える人間。そんな奴等ばっかり。
そのどれもが私には理解し難くて、合わなくて、苦痛以外のなんでもなかった。
「ねぇねぇ〜」
用を足した男が再び私の頭上で声を降らす。
歌っているような声色に、目を瞑ったまま耳を傾けていた。
「……はい」
「なんでもっと叫ばなかったの？」
スッ、と。男が動く気配がして、眉根がピクリと寄る。
「痛そうな声は出してたけど、やめてとか助けてとは言わなかったよね」
「……聞いてたんですか？」
「うん」
「……そうですか」
あっけらかんと男が言う。なんならうきうきと愉しそうに話すから、男は笑ってるのかもしれない。
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作者名：夢乃 | 作成日時：2014年9月12日 20時
