ファシネイティングワールド - 1 - 【完】 (ページ8)

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情けない女だと、誰かが言うかもしれない。

じゃあ逆に聞きたい。だったらお前は立ち向かっていける勇気が本当にあるのかと。

もしこんな３対１の明らかに不利な場で、負けると分かっていながら挑みにかかる人がいたら、それは勇気とプライドを履き違えた愚か者だ。

先ほども言った。

理想と現実は違う。

ここで歯向かえばもっと酷い目にあう。

馬鹿だがそれを分かってる利口な私は―――――――ただ耐えた。

顎を蹴られ、ライターで毛を焼かれ。そしてやっと飽きたのか、最後に唾を吐き捨てられたところで先輩達はトイレから出ていった。

「っ…――～、～」

痛い。口の中いっぱいに鉄の味が充満し、不快に眉を歪め口を開けば自然と血が流れ出た。

絡まれる事はしょっちゅうだが、こんなにボコボコにされたのは初めてだ。

少しでも体を動かせば襲いかかる激痛。トイレの臭いが血のそれと混ざりなんとも生々しく、吐き気を催す。

でもいい加減、誰の尿意が飛び散ってるかも分からない汚い床に踞るのも気持ち悪い。

だから体に鞭を入れ、立ち上がろうとしたその時。

「……うーわ、派手にやられたね～」

頭上から、愉快と蔑みを孕んだ声色が落ちた。

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