ファシネイティングワールド - 1 - 【完】 (ページ6)

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信じられなかった。

効果音を付けるなら“ブシュー！！”って音がぴったりだろう。

勢いよく吹き出た鼻血を見て先輩達は大笑いしている。笑いながら、鼻を押さえ踞る私の髪の毛を掴み容赦なく上に引っ張った。

「いっ！！！」

ぶちぶちと抜けていく髪の毛。頭皮に爪を立てられ事で悲鳴を上げた。

痛い。痛い。痛い。

意に反してこぼれそうになった涙を唇を噛み締めなんとか堪えていた。

「ちょっとー、泣きそうじゃんこいつ」

「いいのいいの。あ、ねぇハサミ頂戴」

目の前で繰り広げられる会話。笑い声。

朦朧としはじめた意識にその声が不快なまでに鼓膜にへばりつき、公衆トイレ独特のツンッとした臭いが鼻孔を伝っていった。

「オトシマエつけてもらうよ？」

ニヤリ、と。口許に汚い弧を描き、先輩が私の髪の毛をより強く引っ張った。

痛い。悔しい。なんで私ががこんな目に。

誰か助けてよ――…

そう願いながら目をギュッと瞑った。

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