ファシネイティングワールド - 1 - 【完】 (ページ47)

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意識が朦朧としはじめた時、相沢謙吾は店の隅に設置されていたエレベーターの［▲］ボタンを押した。

心なしか人が少なくなったスペース。

扉が開きエレベーターに乗り込めば相沢謙吾と二人だけになり、閉まれば煩わしい音は遮断された。

やっと静かになった――…。

頭の痛みがなくなり酷く安心したのも束の間。エレベーターは直ぐに２階に到着してしまった。

また煩くなるのかと。

人でごった返すのかと憂鬱になり落胆した私は、エレベーターの扉が再度開いていくのを睨み付けながら見ていた。

しかし。

「…………」

予想に反し、そこには聴覚を刺激する音楽もなければ、人の気配すらない廊下が広がっていた。

ホッとする筈が、先ほどとは真逆な光景に妙に動揺する。

「こっち」

相沢謙吾が私を引っ張る。

もうそれに抵抗する気力もなく素直に身を任せ廊下を歩いていれば、ふと、相沢謙吾がある部屋の前で足を止め、ガラス張りになっている扉を開けた。

「ようこそ。VIPルームへ」

わざとらしさ満点の、紳士ぶった物腰と共に。

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