ファシネイティングワールド - 1 - 【完】 (ページ40)

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風が気持ちいいなんて、バイクに乗った人はよくそう言ってるけど、私には窒息寸前の凶器にしか思えなかった。

バイクから放り出されないよう、無我夢中で相沢謙吾にしがみつく。

細い腰だ。

けれど余分な脂肪がない筋肉質なそれは間違いなく男人の体だった。

「ねぇ、アオフクいたら教えてね～？」

と。ふいに相沢謙吾がバイクの音に負けない大きな声で言った。

ヘルメットを被っているからその声はくぐもっている。そして、やっぱり男の人にしては少し高い。

……但し。さっきの族の人達に向けた、威嚇するような暗い声を除いて。

「アオフク？」

「交通機動隊の事。あいつらに見付かったら厄介だから」

「え？で、でも、なんにも違反してないですよね？ヘルメットもちゃんとしてるし………あ！まさかこれ、二人乗りダメなんですか？！」

「それは40cc……まぁ早い話原チャリの場合ね。これは400ccだからダメじゃないよ～」

「じゃあどうしてその……アオフクに見付かると厄介なんですか？」

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