20 ページ34
.
……でも、違う。
いや、姿形は間違いなくあの男なんだけど、以前と身に纏った空気がまるで別人だった。
可愛さなんて微塵もない。
体を押し潰すほどの圧倒的な威圧感は、先輩や周りにいる族の人とは桁が違う。
くりくりだった目を細めたその瞳も、
「聞いてんだけど。誰に許可取って暴れてんの?この天下のワールドで」
ゾッとする低い声も、全てが黒い。この夜空よりも、どこまでも暗い。
「ケ、ケンさん…」
「消えなよ。目障り」
「……すみません」
あんなにいた族の人達は、男の一言で一斉にこの場から離れていく。
私は何がなんだか分からないまま。
この男の正体にこれ以上ない疑念を抱えたまま、寝っころがった体を起こす事も出来ないでいた。
と。
「ちょっと、行くよ!!」
「キャッ!!」
……この先輩は、私を痛め付ける天才なのか。
短くなった髪の毛を引っ張られ無理矢理立たされた。
気付けば周りには数える程度の人しか残ってない。
先輩は私の髪を鷲掴みにしたたま、ここに連れてきた車の中へと再び引き摺り込もうとした。
「ぁ……」
その時。トイレで赤いパーカーを被せてくれた―――――――相沢謙吾と名乗っていた男の、漆黒の瞳と視線が絡んだ。
.
9人がお気に入り
この作品を見ている人にオススメ
「オリジナル」関連の作品
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:夢乃 | 作成日時:2014年9月12日 20時