ファシネイティングワールド - 1 - 【完】 (ページ24)

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「はぁ……」

行きたくない。マジで。ため息しか出ない。

礼儀や義理なんて放り投げて、忌々しい記憶が残るこのパーカーだって捨ててしまいたい。

だけどなんの嫌がらせか、なんとこのパーカーは値段の張るショップの一点物だった。

普通に洗濯しようとした時に気付いて、白目剥くかと思ったけど。

アザだらけの顔をマスクとサングラスで隠し、慌ててクリーニングに持ってった時は苛々した。

だってなにそれ！

なんで高校生がこんな高価な物着てんだよ！！

値段なんて詳しくは知らないけど、私がこの前買ったパーカーとは０の数が違うであろう男のパーカーを無いものになんて、貧乏性の私にはどうしても出来なかった。

「……よし」

覚悟を決めろ私。とりあえず辻校に行って少し待って、いないようなら帰ろうとする適当な生徒に渡し、とんずらすればいい。

紐を握る力を更に強める。

信号は赤から青に変わり、歩き出そうと片足を宙に浮かせた。刹那。

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