ファシネイティングワールド - 1 - 【完】 (ページ20)

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あの後。

公衆トイレで気を失い目を覚ましたあの後、私は満身創痍な体を引きずって死ぬ思いで自宅に着いた。

うちの両親は共働きで基本家にいない。言ってしまえば放任主義。

だから家に帰って来た時は二人とも留守で、この怪我を咎められなかったのはラッキーって思った。

……まぁ、そんなの一瞬だったけど。

次の日から私は熱を出した。

怪我は疼くし、お腹空いても作る気なんて起きず水しか飲まない生活で本当に最悪だった。

だから早く治れと念じてたが、治ったら治ったでまた最悪。

だって治ったからには学校に――――…あの街に行かなきゃいけないから。

あの街にはもう行きたくない。

だけど体も心もあの街を拒絶しても、私の通う高校は間違いなくあの街にある訳で。

学校なんて辞めたいと心底思っても、先の長い将来を考えれば高校くらい出た方が良いのは分かりきってた。

一時の感情に身を任せあの街から逃げるのは、ただでさえ平凡な私の未来に傷が付く。

……とか色々正論を纏めたが実際は辞める勇気がなく、面倒臭いってのが一番の本音。

あと三年の辛抱だ。

それにあの先輩達だって、あんだけ私をボコボコにしたんだからもう気がすんだだろう。

そう自分を励まし震い立たせ、アザをファンデーションで隠して制服に身を包んで、

「……」

クローゼットにある、クリーニング袋に入った“あれ”を鞄の中に押し込んだ。

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