ファシネイティングワールド - 1 - 【完】 (ページ16)

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小学生の頃、クラスメートに誘われてやり出した水泳。

やる気はなかった。ただなんとなく始めた。

だけど意外と楽しくて。速く泳げれば嬉しくて。週に２度のスイミングスクールが待ち遠しくてしょうがなかった。

そして何より、水泳の事になると私を褒めてくれる人が沢山いた。

『速いね！』って褒めてくれた。

だから俄然やる気が出て、スイミングスクールがない日は市民プールに通い練習に明け暮れていた。

…………多分、私は子供ながらに分かってたんだと思う。

自分は平凡な人間だと。

ありふれた人間だと。

刺激がない日々にうんざりしてた私にとって、水泳は唯一誇れるもので、自慢で。在り来たりな人間じゃないと証明出来るものだった。

浮かれてた。逆上せてた。

将来の夢はオリンピック、なんて。そんな華やかな未来を信じてたし。

努力は必ず報われると信じてた。

……でも、それがただの幻影だと分かったのは中３の頃。

中学最後の大会予選、私は右足首の怪我により出れなくなってしまった。

あんなに頑張って練習した事全てが無駄になったような気がして悲しかったし、全国を目指してた私にとって、夢が散った事が悔しくてしょうがなかった。

泣きたくて、でも皆の前でなんて泣きたくなくて。

部員に一言ことわりを入れ帰ろうとした時だった。

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