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息が上がる。寒い。男の声が湖の底から聞いているように遠い。
「助けて欲しい?」
甘い蜜を孕んだような声色にぞくりと背筋が栗立った。
温かさを求めるように体を丸めれば、男の手が私の項(うなじ)に触れる。
―――――冷たい。
氷のような、死人のようなその体温に血が冷却していく。
「ねぇ?助けて欲しい?」
「……っ、な」
男の手が首筋を這っていく。愛撫にも似たそれに体が震えた。
助けて欲しい?
誰に?
この男に?
そんなの――…
ちらり、と。前髪の隙間から男を見据えた。相も変わらず楽しそうに笑っている男。
……なんか、犬みたいだな。
愛くるしいその笑顔と牙のような八重歯が可愛いい犬みたい。
「…た……す…け…」
「ん?何?」
私の口元に耳を寄せる男。その際、被っていたフードがぱさりととれた。
柔らかそうな短い茶色の髪。緩くパーマのかかったそれを見て、トイプードル犬だ……なんて。そんな馬鹿な事を思った。
「……け…て…」
「うん」
「………ほしく…ない」
犬みたいに可愛らしい男が可笑しくて。
振り絞って吐いた自分の言葉が可笑しくて。
フッと鼻で笑ったその瞬間――――…
「……っ」
意識が、途切れた。
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作者名:夢乃 | 作成日時:2014年9月12日 20時