☆番外編 内部調査 ページ10
「いや、違うんだ。向こうが誘ってきたんだ。俺は悪くない」
「黙れ。言い訳は無用だ」
──こうなった理由はほんの数時間前に遡る。
＊
「内部調査……？」
「とはいえ、ただの視察だ。そんな大層なものじゃない」
「探偵にでも任せろよ……めんどい」
「もはやめんどくさいとすら言わないのか、A……」
俺達二人はとあるホテルの内部調査を国から依頼された。敵(ヴィラン)がいる可能性があり、それの調査、という名目だ。
だが、従業員の中にいるわけではなく、ホテルという閉鎖空間のどこかに違法物が持ち込まれているとのこと。
「行くぞ、ほら」
「どうせホテル行くならラ──」
「何言うか察したがこれ以上言ったら殴る」
本当にやめろ。
──こうして、捜査に赴くことになった訳だが。ナンパされるし、Aがその女子に向けて個性発動しそうになるし、そのAもナンパされるし、隙あらば座ろうとするしで色々とさんざんだった。
って、ん？
「A……どこ行った？」
気づけば姿が消えていた。しまった、完全に油断していた！
脳裏に最悪の可能性がよぎる。強いAのことだ、そんなことはないと思いたいが、あまりに身体能力が優れている個性持ちだったり、無効化だったら分が悪い。
一応、この布団部屋も探そうと思い、探し始める。
「ん……」
そしてあいつは布団の上で気持ち良さそうにすやすやと眠っていた。
迷わず起こし、正座させた。
そこで場面は冒頭に戻る。
「いや、違うんだ。向こうが誘ってきたんだ。俺は悪くない」
「黙れ。言い訳は無用だ」
「で、でも、……あ」
「──？」
「これ……もしかして例の違法物？」
布団カバーの下に潜り込んだそれを、たまたま見つけることになってしまった。……咎めづらいじゃないか。
終わり
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作者名：紅葉蓮 | 作成日時：2017年3月15日 23時
