誘拐二日目[4] ページ13
自分より年下の子供が二人も、自分の元にいるのがひどく懐かしくて。少しでも現実から目を逸らしたら、色々と思い出してしまいそうだった。
唇を痛いほど噛み締めると、桜哉がやめろと無理矢理口を指でこじ開けさせた。
「……そんな顔、すんなよ」
視界がやけに歪み、滲む。喉が絞められているように苦しくて、心がギシギシときしんだ。
あ、俺泣きそうなんだ、と思って目に力を込めて、ぎゅっと固く閉じたけど、そんな抵抗は無駄で、頬に温かいものが滑った。
「あれ、俺、泣いて、んの?くそっ……なんで、涙ってのはこうも制御できないん、……だよ」
声が出にくくて、掠れた声だけが絞り出されて、普通に平静に話そうとするのは不可能だった。
桜哉が頬に触れ、涙を拭うように指を這わせた。繊細なものを扱うように神経質な訳ではなく、荒っぽいけど、不器用な優しさがある。
「落ち着け。お前は一人じゃない。いるだろ、オレ達が」
長い年月で、ギシギシ痛むのが心なのか、胃なのか、分からなくなってしまったりもした。
桜哉の温かい訳でもない指にすがり付くように握ると、安心した。桜哉は、やっぱり優しいな、と思って、桜哉の友達になれていて良かったなと思った。
それでも、涙はポロポロと流れた。目を押さえると腫れるから、ただ涙を重力に従わせる。
「桜哉、ごめんね」
「謝るなよ」
「迷惑ばかりで、ごめんね。俺がこんなんで、ごめんね」
「謝んなって。お前はそんなんだけど、お前はオレの友達で、家族なんだからさ」
桜哉はこうなった俺を、いつも甘やかしてくれる。友達だと、家族だと、言ってくれる。
嘘つきな桜哉が、嘘を言わないで向き合ってくれているのが嬉しくて、緩く口元に弧を描く。
それから数十分の間、俺はただ静かに悲しみに沈んでいた。
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紅葉蓮*誰か私の誕生日を祝って←(プロフ) - かなとさん» 私もこの作品は楽しんで書いてる節があるので、楽しそうと思っていただけたなら嬉しいです! (2016年9月8日 15時) (携帯から) (レス) id: 5fe719242e (このIDを非表示/違反報告)
かなと(プロフ) - 楽しそう。桜やんとの友情 (2016年9月7日 21時) (レス) id: f3cb0d8152 (このIDを非表示/違反報告)
紅葉蓮*文スト募集企画第二段発動(プロフ) - ななさん» ありがとうございます!私の妄想の固まりですが、読んでいただければ嬉しいです! (2016年9月5日 17時) (携帯から) (レス) id: 5fe719242e (このIDを非表示/違反報告)
なな(プロフ) - 続きが気になります!更新頑張ってください。 (2016年9月3日 21時) (レス) id: eb636dc923 (このIDを非表示/違反報告)
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