マンションの住民転生者【企画小説】

第参拾肆話　[西尾維新：買い物に行きませんか] ページ35

「如何してなんだろうなぁ」


僕には人が解らない。そう云うとなんだか人間失格の主人公みたいだが、別にそういう訳じゃなくて。皆はどうやって笑ってるんだろう、悲しんでいるんだろう、そして何よりどうやって両立させているのだろう。解らない。

西尾維新と云う作家の作品の主人公に引っ張られるかもしれない、と神は云ってたけど、此れじゃ悪化してるじゃないか。前世の僕は少なくとも演技なんてしていなかったし、自分が異端であった事を此処まで恥じていたっけ？

恥じてたわ。演技もしてたわ。何も変わらないじゃないか。莫迦じゃないか、僕。現実から目を逸らし過ぎだ。否興味がないのか？どちらでもいい。どちらでも結果は同じだ。

妙に冷静な自分が嫌いだ。


「本でも買いに行こうかな」


ひとり言。誰も聞いてないし、ましてや返事なんて帰って来ない。


「……と云う訳でみゆきさんを拉致しに来ました」

「は？」

「冗談です。一緒に買い物に行きませんか？」


今、マンションの中の大家が居る部屋(いわゆる管理室)の玄関の中に居る。みゆきさんは部屋にぶっ倒れていたが、憑き物の取れたような顔をしている気もするし、変化がない気もするし、重苦しい顔もしている気もする。

あんまり興味がない。顔色が悪いのはいつも通りか。


「行かない……」

「テレビゲームを貸しましょう。西尾家オリジナルです」


なんやかんやで説得に成功した。買い物と云っても電車で何駅しかないのだから遠くない。買うのも本数冊だしね。

誘った理由は特にない。

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