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異能力『悲鳴伝』についてと西尾の人間性について※全然読まなくていいですページ15

悲鳴が聞こえる範囲に居た人間の三分の一が精神が壊れて死ぬ。ただし、殺す相手は選べない。人間でさえあれば耳が聞こえなくても聞こえる。動物や機械などでは聞こえない。

そして異能無効化出来る太宰さんにも聞こえない。

形容しがたく、名状しがたい、沈痛な悲しみをたたえた振り絞るような超高音の悲鳴という事になっているが、人によってかなり聞こえ方が違う。

耳に入る悲鳴というよりは、頭や精神に直接訴えかけるような悲鳴。生まれてすらいない胎児だろうと意識不明だろうと聴覚に故障があろうと聞こえる。

『大いなる悲鳴』の段階までいくと、全世界に響かせる事ができる。

西尾の声帯が出しているのとはまた違う。物理的破壊が出来る音エネルギーはない。

昔は使う使わないすらコントロール出来なかった。

＊

さんざ殺人犯が嫌いだのなんだの言っている西尾。だが、他ならぬ西尾自身がきっと誰よりも“なんとも思ってない”。理論上嫌うべきで憎むべきだから、大袈裟なまでに嫌う“フリ”をする。

人としてのあり方を知っているのに、自分がそう思えない事にこそ苦しんでいる。なんとか人間らしく生きようとしている。悲しめないことが悲しい、という矛盾した感じ。

自分が受け入れられないフリをしているのに、それをフリもせずに受け入れているのを表に出すのが許せなく、信じられず、妬ましい。

演技を常にし、異端である事を感づかれぬよう、冷静を悟られぬよう、受け入れてしまうのに気付かれないようにしている。

すべてがどうでもいいのに、自分自身だけは受け入れられずに、恥じ、必要以上に振るまいが大きく論理的になり、自分と周囲が感性が違う事で『常識のない振るまい』や『取り返しのつかない事』をするのを恐れている。

演技をしなければ、おそらく周りの人間全員が死んだとしても悲観も悲哀も動揺も混乱もせず、眉一つ動かさないような冷徹である。

なお、わけのわからないものに説明がついてわかるようになるのは快感と言える。