四月某日 ページ1
四月×日 天気 晴れ
本格的な春の到来である。穏やかな風が頬を優しく撫で、心地よさに目を細める。春はいい。蜜璃様が好きな桜餅も旬を迎えただろう(適当)。菓子にはさほど興味がないのでそこら辺は知らない。
伊黒様は本日、蜜璃様と桜を見に行かれている。俺は尾行をしていた。出歯亀の自覚はある。戦闘力は高くないが気配を消すのは得意である。伊黒様に『お前は猫か!! 鈴でもつけろ!』と
桜の花びらが蜜璃様の髪の毛に乗っかる。伊黒様がまばたきをした。
「甘露寺」
「何かしら、伊黒さん」
「あぁ、動かないでくれ」
「えっ? い、伊黒さん!?」
突然伸ばされた手と近づいた顔に頬を真っ赤にする蜜璃様。いいぞ、そのまま接吻だ!!と(勝手に)俺の心は昂ったが伊黒様は紳士なのでどんなに好きでも交際をしていない相手にそんなことはしない。
憎らしいほど(好き)優しく蜜璃様の髪についた花弁を取った。
「取れたぞ」
「へっ!? あ、花びら、花びらね!! そうよね!! ありがとう、伊黒さん!」
「何てことはない」
伊黒様は平静に見えるが、内心いっぱいいっぱいだろう。笑顔がかわいすぎるもんな。わかる。
舶来品の双眼鏡を構えて伊黒様をガン見する。お、ちょっと耳が赤い。
これは入籍だ。なんでこの二人は結婚していないんだろう。答えは簡単、鬼の脅威のせいでそれどころではないから。は?? 鬼???
しかし、鬼がいなければ会うこともない二人なのである。伊黒様は島の出身だからますます可能性が低い。いや……しかし二人は運命だから、鬼がいなくても会うだろう、そうに違いない。
二人が会わないことがあろうか。いいや、ない。赤い糸で結ばれちゃっているので。
つまり鬼を殺せばいいんだな。よくわかった。祈っとこう。鬼舞辻と戦えるほどの実力は俺にはないので、柱任せになってしまうが……。暗い想像が頭をよぎったが頭を振って忘れる。
お二人のような関係性は『尊い』で表せるらしい。尊い。しっくりくる。
二人はそのまま茶屋に入っていった。恐らく蜜璃様が食べるのを優しく(!)見守る伊黒様、という名画にも勝る光景が繰り広げられるのだ。
86人がお気に入り
この作品を見ている人にオススメ
「鬼滅の刃」関連の作品
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
紅葉蓮(プロフ) - ゆうさん» ありがとうございます!!あと少しで一旦完結の予定ですので、頑張ります! (2020年6月14日 19時) (レス) id: e2cb5510b9 (このIDを非表示/違反報告)
二嘉 - いいなコレ。気にいったぜ☆ (2020年6月3日 18時) (レス) id: 5a89568ca4 (このIDを非表示/違反報告)
ゆう(プロフ) - めちゃくちゃ面白かったです!続き読みたいです! (2020年4月27日 21時) (レス) id: 7f11035070 (このIDを非表示/違反報告)
ソーダ - うむ。面白い!よもやよもや! (2020年3月4日 8時) (レス) id: 4b674ab2ae (このIDを非表示/違反報告)
紅葉蓮(プロフ) - 紫呉さん» いやほんとそれですよね…! (2020年2月25日 10時) (レス) id: e2cb5510b9 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:紅葉蓮 | 作成日時:2019年11月25日 11時