第二十五話 ページ26
一方、鶴丸と獅子王。二人は黒い獅子王──通称、黒獅子を探していた。獅子王がなんとなーく感じる気配をたどる。
やどかりに念のため、と渡されたお守りは獅子王が持っている。獅子王の方が生存が低いからだ。
「……たぶん、こっち」
「わかった」
本丸内ははっきり言うと汚いところが多い。靴で歩いた方がいい、と薬研が言ったのはだからかと獅子王は思い返す。
何せ獅子王は禁書庫から出るのは久々だったし、閉じ込められる前も本丸はほとんど見られなかった。こんな惨状も知らない。
目に写る何もかもが新鮮で、ほのかに嬉しいと感じるのは無責任だろうか。
しばし歩いたところで、障子越しに声をかける。
「誰かいるか?」
「……どうぞ」
低い声。獅子王の声とは似ていない。獅子王は障子を開けた。
「……写しの俺に、何か用か? 獅子王、鶴丸」
「──! 俺のこと、知ってるのか?」
「おれのことも!?」
「……鶴丸は昔この本丸にいた。そこまで小さくなかった気もするが……」
みすぼらしい格好の刀剣男士は思い出すように静かに言う。顔はフードの影に隠れ、うまく見えない。
「二人とも亜種だろう。……俺は、黒い獅子王とは面識があるが……もう一人亜種がいるとは知らなかったな」
「黒い俺を知ってるのか!? 薬研は知らなそうだったぜ?」
「あいつは、人前にあまり姿を出さない。それも閉じ込められているとかではなく、自分の意思でな」
「その獅子王がいまどこにいるのかわかるか?」
刀剣男士は沈黙。
「……教える前に、あんたらがどうしてここにいるのか教えてくれ」
鶴丸が燭台切とやどかりが自分を顕現したこと、薬研を手入れしたこと、獅子王を外に連れ出したこと、宗三を治そうとしていることを話す。
審神者、と聞いて体を強張らせた刀剣男士だったが、聞き終えたところで緊張をほどく。
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作者名:紅葉蓮 | 作者ホームページ:
作成日時:2017年11月28日 7時