第二十二話 ページ23
「……ねえ、薬研くん。君が実験の当事者なんだってことは言わなくていいのかい？」
「……あの審神者にはすでに実験の当事者じゃないと伝えただろ。つまり知られたくないってことだ」
「どうして？ 主なら、きっと全力で治そうとするよ」
「だからだ。……あの審神者は目の前のことしか考えてなさそうだし。……いや」
薬研は一瞬考え、
「違うな。目の前のことから目をそらせないんだ」
「ひょっとして……自分のことは後回しでいいって思ってる？」
「……お願いだ、言わないでくれ」
燭台切はスッと目を細め、思考を巡らせると小さくうなずいた。薬研の意思を尊重することにしたのだ。痛いほどよくわかるから。
「光坊ー！ 薬研ー！」
鶴丸の叫ぶ声が響き、俯かせていた顔をあげる。
「……鶴さんが呼んでる。行こうか」
＊
「まずは……足」
呪具を持つ。呪具はつまりは魔術の類いを使う際の媒体のことだ。使用用途は相手を侵すこと一辺倒ではない。
呪具の違いは対応する部位である。まあそれは今回の宗三さんに限った話かもしれないけど。
妄想なら大得意である。イメージトレーニングはばっちりだ。呪文を言う。
「エクスペクト……パトローナァァム！！」
「どっかで聞いたことある！？」
主軸となっているイメージは光線。丸を棒に刺したみたいな繊細な装飾のそれが、淡い光を放ち、それは蝶の姿になって宗三さんの足に消えていく。光線じゃなくてエクスペクトパトローナムか？
どろりとした黒いものが足の断面からまるで血のように流れ出る。
私はどろどろに別の呪具を向けた。これは対呪いの呪具であり、具現化した呪いしか浄化できないらしい。
「エンガチョ！」
「それもどっかで聞いたことあるよ！？」
燭台切のツッコミはさすがの冴え。素晴らしい。
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作者名：紅葉蓮 | 作者ホームページ：
作成日時：2017年11月28日 7時
