第十九話 ページ20
薬研くんの表情に悔やみが浮かぶ。それはきっと、守れなかったことにたいしてのものなんだろう。
「……俺は片目だからまだマシだ。歯がすべてなくなったやつも、手が落っこちて刀が握れなくなったやつもいる。……なあ」
薬研くんの片目から涙が伝った。
「助けを、期待していいのか？ ……あの審神者に。みんながまた笑えるようになるって、信じていいのか？」
「僕は、まだ見限ってないよ」
＊
「コロコロとサイコロ転がして。さあさあ楽しい御遊戯だ。
勝手でなくては死ぬというのなら、死んだ方が世界はマシだ。
そう言ったらみんなみんな滅びるけれど、みなが滅びれば悲しむものもいやしない。
許さない。決して決して許さない。一度おかされた罪は消えないのだから。
行動のすべて、アナタの欲を満たすためだけにあるなんて、あぁ本当に素晴らしい！」
それは、唇に笑みを張り付けて歌った。
＊
「もう一人……？」
「あぁ。そいつも亜種なんだ。……俺とは違って、後天性らしいけど」
「……つまり、そいつもじっけんのたいしょうしゃだったってことか」
二代目、がどのくらい前かはわからないけれど私の複数人が実験をやっていたって予測は正しいのかもしれない。つか正しいんだろうな。想像もしたくないけど。
「その獅子王はどんな感じなの？」
「……黒い、獅子。闇から生まれたんじゃないかって思うくらい、つかみどころのなさそうなやつだった」
「くろい獅子王はおまえのことをしらないんだな？」
「うん。知らないと思う。……知ってて特攻してこない性格をしてないから」
破天荒で攻撃的な性格なんですね。ぶっちゃけ遭遇したくねえ。
「……なあ、ここに来たってことはもしかして何か見つけたい資料があるのか？ ……協力してやるから、俺をここから……出してくれ」
「言われずとも」
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作者名：紅葉蓮 | 作者ホームページ：
作成日時：2017年11月28日 7時
