第十四話※残虐描写あり ページ15
「宗三」
反応なし。当たり前だ、耳がないのだから。目は分厚い黒布で覆われているのだから。俺は中に入る。振動が伝わったのだろう、宗三が顔を上げた。
そっと頬に触れる。宗三の口が俺を呼ぶように動いたが音は伴わない。だって、舌がない。
呪具で作られた傷は手入れをしたぐらいじゃ治らなかった。宗三は動かない。動く足がない。手は食い込む鎖で繋がれて、動かすことなどできないだろう。
宗三の腕に文字を書く。審神者に見せていいか、と聞くため。宗三は小さくうなずいた。首もとまで鎖で壁と繋がれているから、じゃらんと鎖が鳴った。
「いいそうだ。入っていいぜ」
「……痛い」
審神者が最初に言った。
「痛い? 何でアンタが痛いって言うんだ」
「痛そう、って言おうと思ったんだけど……実際に痛いだろうからその表現は違うかなと思っただけ。気にしないで」
審神者の手は震えていた。
「あるじ、へいきか。こわいか?」
「……そりゃあ、ね。こんな目にあわせたやつがあまりに理解できない」
絞り出すように震え声を発す審神者の手を鶴丸国永がつかむ。審神者は宗三から顔を逸らさない。
「それに……くっそムカつく。これの犯人今どこで何してんの」
「……死んだ。殺したのは誰だかわからない」
「そう。……無責任に死んでんじゃねえぞクソが」
審神者は舌打ちをひとつすると、
「現状の私じゃどうにもできない。……情報を集めよう。知は力なり」
「薬研くんは、何かこの呪いについて知ってる?」
「いや。……でも、どの傷がどの呪具でつけられたかは覚えているぞ」
「じゃあ、まずはその呪具について調べようか。どれ?」
俺達は牢の中から出て、床に散らばる呪具を一つ一つ見て回る。
「宗三。……もう少し待ってくれ」
そんな声、届くはずないのに。言わずにはいられなかった。
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作者名:紅葉蓮 | 作者ホームページ:
作成日時:2017年11月28日 7時