第十三話 ページ14
審神者が白衣を翻しながら階段を降りる。その白衣は『服が汚れるかもしれないから、着替えた方がいい』と言ったら審神者が荷物の中から引っ張り出してきた。
「何で白衣持ってるの？」
「ん？ あぁ、備えあれば憂いなしってやつだよ。汚れても構わない服をたくさん一気に持ってくるのは面倒だしさ。一着で済むならそっちが楽」
「きつねめんにくろしょぞくにはくいってそうとうあやしいぞ」
「この格好で出歩くんじゃないんだからいんだよ別に」
靴まで黒い。黒が好きなのか？ 狐面も若干黒が混じってるしな。
「薬研、こっちで本当にあってる？ いかにもな地下牢過ぎて逆に不安になってきた」
審神者が俺に尋ねたので、うなずく。
「あの状態の宗三を移動させるのは難しいだろうし、誰かが昨日今日で変えてなけりゃ場所は変わってないはずだ」
「あの状態のって……私みたいな小者が行って大丈夫なのだろうか……」
不安を声ににじませる審神者。それでも歩く足は止めないのだから、小心者なのか度胸があるのかなんなのか。
「この階だ。足元気を付けろよ」
「うおっ。何これ変な形の道具だな」
「不用意に触らない方がいいよ。呪具だと思うし、触るだけで発動するやつもあるから」
「呪具がこんな安っぽく転がってるとか怖すぎだろ」
口調こそ軽いが声は固い。緊張しているらしい。
「燭台切、審神者が辛そうだったら目を覆ってやれ。……ドギツイぞ」
「わかった。主、辛かったらすぐ言って」
「おれにもいえよ？」
「了解です……」
俺はそこで審神者の前に出た。宗三も最初に俺を『認識』した方がいくらか安心だろうと思ったからだ。
「ちょっとそこで待っててくれ。宗三と少し話をしてくる」
「わかった。宗三くんが良さそうだったら呼んで」
鍵がかけられていない檻の扉に手をかける。
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作者名：紅葉蓮 | 作者ホームページ：
作成日時：2017年11月28日 7時
