天使(仮)の人生は平穏無事とはいかない。【オリオンの刻印】 (ページ20)

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19、クラリオの優しさページ20

合宿所を出て道に出ると、かなり小さくだが、クラリオの姿が見えた。

貴女「もうあんな所に…！」

Aは走ってその背中を追った。

走って走って、だんだん距離が縮まる。

今名前を呼べば、気づいて立ち止まってくれるかもしれない…！

貴女「あっ…あの！クラリオさ…」

呼びかけた時、石につま先が当たり、体のバランスを崩してしまった。

貴女「どわぁ⁉」

べちん、と音を立てて盛大に転んでしまった。

貴女「いっ…てててて…」

上半身だけ起こした時。

「大丈夫か」

頭上から低い声が聞こえてきた。

貴女「はっ…」

顔を上げると、クラリオが立っていた。

貴女「あ……」

こんな姿を見られてしまったことへの恥ずかしさで、Aは顔から火が出るかと思った。

クラリオ「怪我はないか」

クラリオはAに手を差し伸べてくれた。

貴女「あ…だ、大丈夫！大丈夫です！ありがとうございます！」

Aはクラリオの優しさに感動しながら手を借りることなく立ち上がった。

立ってみると本当に圧がすごく、Aはつい尻込みしてしまう。

貴女「…あ、あの…えっと…」

いろんな意味ですごい人を前に、Aの頭は真っ白だった。

あれ…私何で追いかけてたんだっけ…

…っていうか…本当大きいな…私なんてすごい見上げる形になっちゃう。

な…何か喋らないと…で…でも何言うんだっけ…

あ…そうだ。まず言わなきゃいけないのは…

貴女「き…今日はわざわざ来ていただき、ありがとうございました！」

Aは深くお辞儀をした。

本当に言うべきはこのことじゃないだろうが、これもAの言いたかったことだった。

貴女「私たちみんな、よりレベルアップできるように頑張ります！」

クラリオ「…礼には及ばない。私も、ここに来たおかげで良いものが見られたからな」

さっき言ってた「ある選手」の練習のことか。

クラリオ「…貴方は、イナズマジャパンの女性選手だったな。礼を言いにわざわざ追って来たのか」

貴女「えっ？い、いや…」

クラリオ「そういう律儀さは、日本人の良いところだな」

貴女「…えーっと…お礼を言うためだけじゃ無いような…」

クラリオは軽く微笑んでいるが、Aはまだ混乱していた。

クラリオは、言わば自分の憧れていた人だ。そんなすごい人と話していることが未だに信じられず、Aはまだ自分が何故追って来たのか思い出せないほど頭が回らずにいた。