45、優しさに包まれて ページ46
電話を切った後も、Aは優しさに包まれている気がしていた。
一人で不安を抱え込んでいたから、怖かったのだろう。
でも、Aは一人じゃなかった。
いつでも話を聞いてくれる仲間が、Aにはいる。不安を受け止めてくれる人たちが。
その事実に改めて気づくことができて、Aに不安はあまり残っていなかった。
貴女「ごめんね一星くん。おまたせ…」
携帯を置いて一星の方を見ると、先程までの優しい笑顔とは違う、怖い顔をしてこちらを見ていた。
貴女「い、一星くん？」
待たせちゃったから怒っているのかな。
一星「…今の電話、誰ですか？」
そして突如部屋に響いた聞いたことない低い声に、Aは再び一星相手に恐怖を感じた。
まるで、ペクから脅された時のような…。
いや、もしかするとそれよりももっと低く、深く、恐ろしかった。
一星「もしかして男ですか？」
貴女「あ…えっと今の人は…」
一星「絶対そうだ。やたらメスの顔になってましたもんね」
貴女「な…何それ…」
目だけ、笑っていなかった。
一星「もう…ダメじゃないですか先輩。部屋には僕がいるのに他の男の相手したりしたら」
貴女「で…でも一星くんが出ていいって…」
一星「てっきり女友達かと思ってたんです…。僕を放って他の男と話してほしくなんてありませんでしたよ」
貴女「…ご…ごめん…」
Aは一星のあまりの剣幕に、思わず謝ることしかできなかった。
今の一星くん…何か…怖い…？
一星「まさか彼氏ですか？」
今までで一番圧のある声だった。
貴女「ち、違う違う！チームメイトだった人！」
一星「……」
貴女「色々励ましてもらってただけ…！」
Aは必死に一星に説明した。
何故自分が必死にならないといけないのかわからなかったが。
すると、怖かった一星の顔に、再びあの人当たりの良さげな笑顔が戻ってきた。
一星「ですよね。違いますよね。あー良かった。」
まるでAに彼氏などいるわけがないとでも言いたげな意味合いのようだったが、Aにはそれに突っ込む余裕などなかった。
……ん？良かった⁇
貴女「…よ、良かったって…何が？」
恐る恐る訪ねてみると、今度はニヤリと小悪魔のような笑みを浮かべた。
一星「先輩、僕を彼氏にしませんか？」
貴女「……」
…は⁇
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作者名：紅葉 | 作成日時：2019年5月27日 23時
