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俺は怖くなって逃げ出した。
今すぐここから離れたい。
どこに行く当てもなかったが、必死に走った。
涙が止まらない。
バキッッ!
N「ああ!!」
涙で視界がぼやけたまま無我夢中で走っていたら木の根に躓いてしまった。
体勢を崩した方向が悪く、道のない場所に転げ落ちた。
バサバサバサ
泣きっ面に蜂だ。
恐怖心で身体に力が入らなかった俺は、半ば諦めの気持ちで、草木に当たりながら山の斜面を転げ落ちるしかなかった。
突然、身体がキツく包み込まれた。
それと同時に全身を襲う衝撃が消えた。
N「...っ、」
俺は恐る恐る目を開けた。
誰かの腕の中だった。
「大丈夫か?」
返事ができなかった。
俺は今ターゲットだ。
今、人に出会ったら殺される...!
N「いっ嫌!!」
もう誰も信じられない。
N「放せっ!」
「落ち着け、この近くに....」
そこまで言って男は周りを気にしだした。
(な、何...?)
「立てるか?」
N「えっ........」
「捕まって」
N「うわっ!」
男は最も簡単に俺の体を担ぎ上げた。
もう抵抗する力など残っていない。
俺はなされるがまま、せめて振り落とされないように走る男にしがみついた。
『いたぞ!!』
『挟み込め!!』
「回られた。」
どうやら逃げ場を失ったらしい。
男は俺の顔を一瞥して言った。
「ごめん、目を瞑って」
俺たちの目の前には広大な海。
嫌な予感はしてたけど、まさか...
この男は俺を抱え直し、しっかりと抱き込んだ。
そして躊躇いもなく地面を蹴った。
辛うじて、追っ手が崖から俺たちを見下ろすのが見えた。
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作者名:momiji | 作成日時:2021年10月14日 1時