胡散臭い依頼編13 ページ3
場所を教えてもらった私たちは、その落とし物をしたという観光名所へ行くために辻馬車に乗った。
辻馬車とは庶民でも使える馬車……まあタクシーみたいなものだ。ちょっと割高だけど、徒歩で移動するのと比べたら割に合うと思う。
布張りの馬車は5人で座ってもう満員に近かったため、他の人は乗っていない。
ここから御者台は見えないし、距離があるので会話も聞こえないはずだ。
乗る前に御者に目的地までどのくらいかかるのか聞いたところ、30分ぐらいだという。
道は整備されていて、揺れもそんなに気にならない。
木の椅子だったからお尻を痛める覚悟はしていたんだけれども、杞憂に終わったようだ。
kn「ここに来て初めての遠征ちゃう？」
『ちょっと緊張してきました……』
ut「早ない？30分以上馬車の中やし、寝といてもええで？」
『いや、それはさすがに……』
いくらパーティーのメンバーとはいえ、男性に寝顔を晒すのは恥ずかしさがある。
ut「なんやったら肩貸すよ、ほら」
『いやいやいや』
shp「バイト中も思ってたけど、俺らが実況者やからって遠慮してない？仲間やと思ってええから」
それもそうだけど、相手は男性だ。密着するなんて、と私は必死に頭を横にぶんぶん振った。
kn「恥ずかしいんやってさ！」
ut「そうか、俺のあふれる魅力のせいで……」
shp「特にそういうのじゃないと思います」
ut「えっ」
それもちょっとあるけれど、ショッピが否定したので鬱先生は愕然としていた。
zm「じゃあ俺は今のうちに本でも読もっかな」
と、ゾムは荷物から本を取り出す。
ut「お、新しく買ったやつ？なんやっけそれ」
zm「『初心者のための盗賊入門』。やっぱ盗賊といえばピッキングやな！宝箱開けるとかな！」
shp「観光名所に宝箱なんてあるかな……？」
zm「敵がドロップするとか……どうなんやろ。まあ覚えといて損はないし、ええやろ」
kn「まあ、せやな」
私たちは談笑したりぼーっと外を眺めたり、馬車の中で各々自由に時間をつぶした。
しかし5分経ったあたりでゾムは体調悪そうにうめく。
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作者名：REO | 作成日時：2024年3月23日 11時
