57 ページ8
まぶたの裏でも感じる明るさに目を開けると、白い天井が見えた。
誰かに手を握られている感触に頭を傾けると、うつらうつらとまどろむショッピの姿が目に入る。
ぴくりと指が動いた感覚でぱっと目を覚ましたのだろう。
ショッピは顔を上げ、ぼんやりと目を開けているAに気づき、前のめりで叫んだ。
shp「Aさん！」
『……ごめん、なさい』
紫色の目が先ほど見た冷たい視線を思い起こさせ、Aはとっさに謝罪の言葉が出た。
しかしその声は思っていたよりかすれていたので、自分は今まで寝ていて、さっき見ていたのは夢だったのかと思い至る。
『……医務室？』
風邪をひいたときに数日泊まっていたところだ。
周囲を見回しながら起き上がろうとすると腹のあたりが痛み、うめいてベッドに沈んだ。
shp「あんまり動いてはいけませんよ、まだ傷が治ってないんですから……深かったらしくて、一歩間違えていたら命が危うかったと、聞きました」
ショッピを見る。寝転んだ姿勢からだと彼の顔がよく見える。
表情からうかがえる感情は……苦しさ？
shp「二週間……眠ってたんですよ」
彼が話しだしたので、どんな罵倒が飛び出すかと身構えた。
だが次に見えたのは、頭を下げた彼のつむじだった。
shp「気づいてあげられなくて、すみませんでした」
『え……？』
shp「ずっと近くにおったのに、Aちゃ……A…さんのこと、なんも分かってなかった……」
Aは言い直した言葉を聞き逃さなかった。ゆるりとそれに首を振る。
『……私はショッピくんの探してる、Aちゃんじゃないよ』
shp「いえ、Aちゃんです！」
ショッピは繋いだ手にぎゅっと力を込めた。
shp「話はグルッペンさんから聞きました。……事故で記憶をなくされたんですよね。Aさんはβ国に住んでいたと」
こくり、とうなずく。両親と馬車に乗った事故で、頭を強く打ったのだと祖父から聞いた。
その他にも色々ケガを負ったが、一番重大だったのは記憶を失ったことだった。
shp「Aさんが昔生まれ育ったところは、我々国だったんです」
『え……』
shp「すみません、Aさんの家に行きました」
Aは母方の親類……親戚を頼って我々国にやってきたのだ。
とつぜん家に押しかけた軍人に、親戚はさぞ驚いたことだろう。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 705人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を含むプレイリスト 
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
セネリオ - めっちゃ良き！！sypくんのSっ気が萌える…！これからも応援してます！ (2022年12月27日 10時) (
レス) @page30 id: bb7bb5003e (このIDを非表示/違反報告)
さーたん(プロフ) - syoくんの台詞に心が惹かれました！！！！！ これからも更新よろしくお願いしますm(__)m (2022年6月24日 2時) (レス) @page13 id: 3978148763 (このIDを非表示/違反報告)
える＠脅威推し - shpくんのセリフがぁぁぁぁぁぁ！！！！！かっこいいいいいいいい！！！！ (2022年6月23日 14時) (レス) @page13 id: e5ffed06b8 (このIDを非表示/違反報告)
える＠脅威推し - knさん本当に男装女子に気づかずセクハラしてそう(((( （偏見） (2022年6月22日 11時) (レス) @page12 id: e5ffed06b8 (このIDを非表示/違反報告)
える＠脅威推し - 続編おめでとうございます！！ (2022年6月15日 20時) (レス) @page7 id: 9a21cb3d54 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：REO | 作成日時：2022年6月7日 9時
