神は我が力なり【d!】 (ページ10)

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無価値ページ10

魔界、地獄の奥の奥の奥。全ての悪魔が住む万魔殿のその更に奥にチーノ達上級悪魔は住んでいた。

「誰もおらん…な「おや、チーノさん」っ！？」

明らかに怪しい挙動で物陰に隠れながら移動するチーノと、それに声をかける1人の悪魔。

「何っやねんエミさんかよ！！」

「えぇ…」

ベリアル、又の名をエーミールである。一見気弱で気の良い男性に見えるが彼は列記とした上級悪魔であり、チーノが警戒する悪魔の内の1人であった。

やいのやいのと騒ぎ立てるチーノと、訳も分からず責め立てられるエーミールの中で眠っていたAは目を覚ました。

「おや、チーノさんこの方は？」

目を覚ましたらよく分からないおどろおどろしい場所におり、突如として知らない男に顔を覗き込まれたAの心中は決して穏やかでは無かったが幼子の様に泣きわめく気力も体力もAには残されていなかった。

「俺の妹、Aって言うんですよ、いや〜可愛いでしょ？」

まるで愛玩動物を見せつけるかのようにAに頬ずりしながらエーミールに見せつけるチーノと、はてチーノに妹なんぞ居たのかと思案するエーミール。
まぁ、血の繋がりも感じるし魔力もチーノのものと非常に似た匂いがしたのでそうなんだろう、と結論付け胸に手を当て紳士らしく恭しくAに向かって挨拶するエーミール。
関係性の希薄さというのはこういう所で便利である。

「初めましてAさん、私エーミールと申します。」

以後お見知り置きを、と何処からとも無く蝶を舞わせひらひらとAの周りを飛ばす。妙に耳馴染みの良い声と、物腰柔らかな姿勢はAの警戒心を溶かすのにそう時間を取らせなかった。

「…A、あんま気ィ許さん方がええで。この人根っから悪魔やから。」

おや失礼なとエーミールはくすくす笑うが言われてみれば何処か芝居がかった言動のような気もする。兎も角、今のAにはチーノ＝唯一無二の肉親と言う方程式が出来上がって居たので頼れるものがチーノしか無かったのだ。これもチーノが掛けた魔術の1種なのだか今のAにそれを知る術は無い。

「失礼ですが、Aさんは悪魔になりたてでしょうか？」

まぁ、とチーノは肯定する。そもそも悪魔がどう誕生するのか誰も知るものはいないし、最近悪魔になったというのもあながち嘘では無い。

「では宜しければ、私達について少しばかり説明をさせてください。」

Aの手を取りエーミールは和やかな笑みを浮かべた。