神は我が力なり【d!】 (ページ9)

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追憶ページ9

「これで、やっと…。」

悪魔と言うのは自由であって、それでいて誰よりも孤独だ。
各々が利己的で排他的なので、天使達のような繋がりはなく同じ悪魔と言えど関係性は希薄である。
そんな中で、チーノは誰よりも孤独を嫌っていた。彼はずっと昔から唯一無二の、"家族"が欲しかった。

「俺はAのお兄ちゃんやから、何があってもAを守ったげるからな。」

遠い遠い昔のこと、気まぐれに襲った人間の事をチーノは思い出していた。
そんな小さな体躯で適う訳もないのに、妹を守るために勇敢にもチーノに挑んできた少年。怖いだろうに、妹を犠牲にして命乞いでもすれば良いのに、足を震わせながらでも妹を隠しながらチーノの前に立ちはだかった。

その時からだ、チーノが異様に"血縁"に拘りだしたのは。

結局、その兄妹はどうなったんやっけ…。

兎も角、気が遠くなるような長い時を経て、漸く彼が真に欲しいものが手に入った。

「血も直ぐに馴染んだし、きっと俺らは運命やで。」

もっと時間がかかると思ったが、思ったよりもチーノの血はAに良く馴染んだ。興奮して少しばかり魔力を注ぎすぎて魔力酔いを起こさせてしまったが、まあ許されるだろう。
何せ、こんなに長い間待ち続けたのだ。

「俺らだけの、誰にも邪魔されん世界を作ろうな。
お兄ちゃんとの約束やで。」

意識の無いAの手を絡め取り、己の小指とAの小指を結ばせる。
指切り、これも昔人間同士のやり取りを見て覚えたものだった。

「嘘ついたら針千本飲ーます、指切った。」

一際強い風が吹き、木の葉が舞い上がったそこには、1輪の百合を残し、もはや誰の姿も見えなかった。