神は我が力なり【d!】 (ページ7)

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神に似た者ページ7

天界の宮殿の奥の奥のさらにその奥、威風堂々と構える玉座の右に彼は立っていた。
玉座の左には花瓶にさされた一輪の百合の花。何処か異様な空気が空間を支配していた。

「トントン」

コネシマの呼び掛けにも答えずただじっと壁に埋め込まれたステンドグラスを見つめ、徐にその両翼をはためかせた。

「神は我が力なり、大天使ガブリエル＿＿＿」

男らしい大きな手で、ステンドグラスに描かれた剣と百合を持つ女性を撫でる。

「正義と真理の象徴で俺の片翼…。」

何か一言でも発しようと、コネシマは喉を鳴らそうとしたが耳が痛くなる程の静寂がそれを許さない。

「コネシマ、お前みたいな聡明な天使ならAがどこにおるかくらいもう分かっとるやろ。」

「……魔界に。」

ピシリ、と音を立て美しいステンドグラスにヒビが入る。ミカエル…トントンの顔は天使の名に恥じぬ穏やかなものであったが、其れが逆にコネシマすら怯えさせるような恐ろしい物に見えた。

「俺は別にお前らに怒っとるわけちゃうねん、それは理解してくれな。

俺は、俺自身に怒ってんねん、」

すっと翼を休ませ、音もなく地面に降り立つ。
コネシマの元へと向かう足音だけがこの世界の全てだった。

「今こうしとる間にもAは怯えとるかもしれん。性悪な悪魔共の事や、Aの心を乱して惑わしとるに決まっとんねん。

＿＿＿＿全部、俺のせいや。」

柘榴を煮詰めたような深紅の瞳が、ここでやっとコネシマを捕らえた。

「そんなこと、「そんなこと、あるからこうなってんねん。」…
っ、」

「やっぱり両翼切り落とすだけやあかんかってん、Aには俺が、片翼の俺がおるんやから足も要らんかったんや！！！！」

怒りを孕んだ怒声が、コネシマの鼓膜を震わす。
この場では一切の発言も許されない。

「大天使を今直ぐ此処に全員集めろ、下界に降りとる奴も全員や。

害虫(悪魔達)を根絶やしにする。」

風もないのに百合だけが揺れていた。