神は我が力なり【d!】 (ページ15)

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光を拡げる者ページ15

先刻、口付けされた額がほんのり熱を持つ。悲しそうだけれど、其れよりも喜びを含んだ澱んだ藍色の目。何故か懐かしいと思ってしまった。

此処に来る以前の記憶が無い。暖かくて眩しい様な、安心出来るような場所にいた気がしたけれど。

兎にも角にも自分のことさえ覚えていない私にとって、チーノは唯一の救いだった。＿＿最も、そんな彼は先程から不機嫌そうに爪を噛んでいる。

「＿＿＿ぁあ、腹立つなぁほんとに。」

元からふわふわと波打つ薄氷色の髪の毛をぐしゃぐしゃと掻き回しながら、荒々しく手を引かれる。あまり温度を感じない手に引っ張られながら、足早に何処かに向かっていく。

「今からサタン…俺らのボスに会うけど。」

徐に足を止めたその眼前。他者を寄せつけない重厚な扉の前。重い鉄越しにもその禍々しさが伝わってきてごくりと生唾を飲む。

「さっきの彼奴、鬱先生みたいに何しでかすか分からんから。」

がしり。頬を掴まれ、彼と否応がなしに目が合う。
溶けた鉄のような、どろりとした熱を持つ橙。そのフィルター越しに映る自分の瞳も彼とお揃いの橙だった。

「これだけは覚えといて、

Aを見つけたんは他の誰でも無い、"俺"やってこと。」

彼に頬を掴まれているせいで首を縦にも横にも振ることを許されない。そのまま数秒見つめ合えば、満足した様で彼はパッと手を離した。

「ほな謁見の時間や。俺らのボスサタンであり、天界一の反逆者＿＿＿＿

堕天使ルシファーに。」