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Side Taiga
隣から聞こえてくる、
俺の好きな声で目が覚める。
「…おねがい、大我。1人にしないで、大我、大我、行かないで…」
寝言いっているようだった。
必死に俺を引き止めている。
夢でもみているのだろう。
死にたい。
彼のためにも俺はいなくならなくちゃいけない。
ちょうど1ヶ月前、
そんな気持ちが生まれてきた。
俺なんかがいたら、彼から、大切な弟から、
また何か大事なものを奪ってしまう気がして。
もうなにも考えられなくて。
病院から退院した後、
ずっと頭痛が取れず、1日目、2日目…
最初は用量を守っていたはずだけど、
どこからか1日に、1回に飲む量が増えてきた。
そして、ちょうど昨日。
薬を飲んだら、死ねるかもしれないと思って、家にある薬を手当たり次第飲んだんだ。
いくつ飲んだか、なにを飲んだか、
そんなのなにも覚えてない。
ただ、心の中にあったのは、消えたい。
その一心だった。
でも、大切な弟に、「行かないで。」
寝言であってもそんなことを言われたら。
久しぶりにしっかり顔をみた。
母さんと父さんの良さを存分に受け継いだ綺麗な顔。
ぼっーと、彼の顔をみていると
うっすらと目が開いて、すぐに目が合う。
「…大我、ごめんなさい。おねがい、1人にしないで。」
起きた途端に、言われる。
なぜ彼が謝るのか、
全然わからなかった。
ベッドから起き上がって、
隣のベッドの端に座る。
少し体がだるかったけどそんなの気にならない。
「違うよ、北斗、おれ『大我が生きててよかった。』」
おれが悪い。おれが悪いんだよ全部。
母さんと父さんが刺される中、
俺は何もできなかった。
俺が悪い。俺が謝る方だ。
そう伝えようとしたけど遮られた。
『生きてて良かった。』
あぁ、俺は、
この言葉を待っていたのかもしれない。
嬉しかった。
大切にしている彼から、
1番誰かに言って欲しかった言葉を伝えられて。
罪悪感ばかり生まれていた心の中に
北斗の言葉が暖かく広がる。
「大我、たいがっ、おねがいっ…」
小さな子供のように泣き続ける北斗。
悪いことをしたなという気持ちもあるけど、なんだかその姿が、懐かしくて、可愛くて。
「ごめんね、北斗。兄ちゃんが間違ってた。もうやめる。大丈夫だよ。」
2人で互いに支え合って生きていこう。
そう気持ちを切り替えられた時だった。
end
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作者名：Moku | 作成日時：2020年5月23日 8時
