約束の日 -6 ページ27
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「おまえあらんくんのこと好きなのに、あらんくんに飯とか誘われてるし焦るに決まってんじゃん…」
あらんくんイケメンだしさ、始めの頃とか俺お前のこと嫌いだったから仕方ねえし、その間にあらんくんを好きになったとか俺どうしようもねえじゃん。
ズルイってわかってる。
私は亜嵐くんのことが好きなのに。
それでも、寝言混じりに恥ずかしげもなく呟かれる玲於の本音に顔に熱が集まるのがわかる。
いつもの玲於からは想像もできないくらい真っ直ぐで甘すぎる気持ちを聞かされたからか、なんだか胸がキュッとなる。
…これは恋じゃない。愛じゃない。
母性本能がくすぐられるみたいな、そんな感覚。
そうだ。そうに違いないんだ。
「なんか言えよ」
「…な、んて返すのが正解なの」
そこからまた返事が返ってこなくなったので、水を飲んでちょっと落ち着こう、とジョッキに手を伸ばした。
しかしその手は届くことがないまま、横から伸びてきた玲於の手によって捕らえられてしまった。
捕えられた先を見ればもちろん起き上がった玲於がいて、いつもと様子が違うのは見れば明らかだった。
私のことをまっすぐに捉える熱い視線は酔いからくるものなのか、それとも。
所詮酔っ払い相手だし、と精一杯気丈に振る舞って強気に返す。
「なに？」
「おまえ、もしかして俺のこと意識してる？」
なにをいってるんだこいつ、といつもなら笑い飛ばせたんだ。
そんなわけないでしょ私達何年の付き合いだと思ってんのって玲於の気持ちを考えないほどに馬鹿正直に返せていたはずだ。
そう、いつもなら。
何故か次に続くはずの言葉が出てこなくなって、ついでに玲於の熱すぎる視線にも耐えられなくなった。
窮地に追い込まれた私には為す術もなくて、玲於の手を振り払って、わざとらしすぎるほどアホなタイミングでちょっとトイレと言ってその場から逃れた。
撤退する以外なかった。
自分がこんなにも都合のいい人間だなんて知りたくなかった。
好きな人が振り向きそうにもないからって、自分を好いてくれる人を意識しだすなんて。
真っ直ぐに向けられた気持ちを踏みにじってしまっている気分だった。
もう、玲於に合わせる顔がない。
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作者名：も。 | 作成日時：2019年4月7日 22時
