人間に恋をした人魚姫は【中原中也】

Mermaid＊7 ページ7

｢A、ただいま。｣

『中也！お帰りなさい！』

部屋で、鴎外から借りた本を読んでいたAは、三日ぶりの中也との再会に、とても喜んでいた。

人間になってから一週間と三日が経った為、今ではAは歩くことに加え、走ることも出来るようになった。

｢この三日間、元気にしていたか？｣

『元気にしていたわよ、あれだけ"大丈夫"って言ってたくせに、少し寂しくなっていたけれど……』

｢そうか。そうだ忘れないうちにこれ、Aに渡さないとな。｣

中也から渡されたのは、貝殻の形をした綺麗なネックレス。

『これ……どうしたの？』

｢ここに帰る前日の夜にどこかから、Aの声に似た綺麗な歌声が聴こえてきたンだ。そしたら周りの黒服のヤツらが、"人魚の歌声みたいで綺麗ですね"なンてこと言い出してよ、それで思わず買っちまったンだ。人魚にちなンで。｣

『そうだったんだ。私ね、実はこの三日間、毎日のように海辺の近くで、歌を口ずさんでいたんだ。それが、中也達がいるところまで聴こえてたなんて……なんだか嬉しい。』

｢あ！あの歌声やっぱりAだったのか！？｣

『うん、そうだよ。』

小声で口ずさんでいたのに、気づけば中也がいる所まで私の歌声が響き渡っていたなんて少し驚いてしまったけど、中也が｢また歌ってくれないか？｣と言ってくれてとても嬉しく思った。

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