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｢お前、あの子のお姉ちゃんじゃねえの｣
｢違う、偶然見かけただけ｣
｢……お人好しなのね〜｣
俺はそんなこと出来ねえわ、と肩をすくめると、そいつはキョトンと首を傾げた。
しかしよく見たらこいつ綺麗な顔してんな、しかも制服白鳥沢じゃん。ってことは、お嬢様か。
お嬢様が、ガキのために木に登ってたのか。
そう思うとなんだかおかしくて笑ってしまった。
｢……あの、ありがとう。ごめんなさい、重かったよね｣
｢ダイジョーブダイジョーブ｣
俺達は立ち上がって服についた砂を払う。どちらも白のブレザーだから汚れが目立って仕方なかった。
と、砂を払う手を止めたかと思えばいきなりガッ！！！と俺の手首を掴んできた。うお！！！！
｢な、なな何！？｣
｢……血｣
｢はい？｣
｢血が出てる｣
｢え、嘘｣
凛とした切れ長の目が凝視している自分の手首を捻って見てみると、確かに血が出ていた。変に切ってしまったのか、案外血が出ている。
まあこれぐらい大丈夫だろ、と言おうとしたが、女は元々白い顔をさらに真っ白にして心配そうに怪我を見つめていた。まるでさっきの少女のようだ。
と、何か思いついたように｢ちょっと待ってて｣と言い、全速力でどこかへ走って行った。いいフォームだな、なんて思いながら俺はどうすることも出来ないので大人しくその場で待つ。
なんつーか、突飛なお嬢様だな。普通人が困ってるからって木に登るか？しかも自分が落下したのに、他人の怪我の心配するか？見て見ぬふりすりゃいいのによ。
｢……変な奴｣
｢ごめんなさい、待たせて｣
息を切らして帰ってきたそいつの右手には濡れたハンカチ、左手にはコンビニの袋があった。
そして俺をグイグイとベンチに座らせ、なんの躊躇もなく隣に座って俺の泥や血のついた手首を濡れたハンカチで拭った。
｢おい、それ良いハンカチなんじゃねえの｣
｢知らない｣
｢知らないことねえだろ｣
｢別にいい、ハンカチは汚れを拭くために使う｣
……そうだけどよ。
それから彼女は黙々と汚れを拭き取り、袋から消毒液を取り出して丁寧に手当してくれた。
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作者名：彗 | 作成日時：2019年4月26日 13時
