【刀剣乱舞】成り代わり鶴が本丸で奮闘する話【３】

木炭 ページ29

小さくてふにゃふにゃしててコロコロしてて、甘くて暖かくて良い匂いのする可愛い可愛い未知の生物。

それが齢6つの時に産まれた妹であった。

いつも後ろをついて回って、「お兄ちゃん」と真っ直ぐに慕ってくる妹を、兄はそれはもう全力で可愛がっていたのだ。シスコン上等。そうです俺がシスコンです。

可愛がって守って手を引いて、それが性来の人見知りに拍車をかける結果になったなんて当人達は知らない。


大学卒業後は共に親の店を継ぐものだと思っていたのに、ある日突然「審神者になる」なんて言って手の届かない場所へ行ってしまった妹。

そんな妹が数年ぶりに帰ってくる。
歓喜に震えた。

そんな妹が、男を連れて帰ってきた。
殺意に震えた。


「どう？お口にあったかしら」

「美味しい…です」
「ああとても。いつも作ってくれる味だ」
「あら！手料理振舞ったりしてるのね！」

「五条さんイケる口だねえ」

「お父様こそ。お酌しますよ」


距離の詰め方が狂ってるとよく称される両親の絡みにも完璧に答え、父に酒を勧められるがまま飲んでる……ように見せかけて実はそれっぽく話術で誤魔化しているのが、初対面で包丁を投げつけたことにより妹から接触禁止を言い渡されていた兄からは分かった。

なんだアイツ。キャバ嬢より接客がプロ。

「すまない。まだこの小さな弟を一人で留守番させるのは不安でな。同行を許してくれたこと感謝する」

そう頭を下げ、船を漕ぎ始めた弟を抱き上げて充てがわれた寝室に消えていった背を見送る。

顔良し、身長良し、愛想良し、包丁を受け止めるだけの身体能力良し。
さらに詳しくは知らないが、政府関係の仕事をしているならば収入も良しだろう。
加えて家族想いとか。

重箱の隅までピッカピカな男に兄は歯をギリギリした。

そんな兄にAは胃がギリギリした。







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今回は間話です。
許して……_(┐「ε:)_

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