玉鋼 ページ27
今年初の雪が本丸に降った。
電気ヒーターを入れてほんのり温かい部屋で、ボタンを締めるという動作に慣れないながらも真新しいシャツに袖を通す。
内番着すら和服の私には洋装は随分と窮屈に感じた。
というかスキニーがマジでちょっと、現世に馴染むため以外には着たくない。
好んで着てた人間時代はいずこ……?
「うっ……」
「ん?ああちょっと待て」
隣では同じく洋装に馴染みのない小夜が、かぶったセーターの出口を見失ってもがいてる。可愛い。
見守りたい気もするが時間も迫って来ているので手伝ってやると、スポンッと癖の強い頭が出てきた。
「パチパチします……」
「服の素材ももう少し考えるべきだったか」
まあ申し訳ないが、今回は我慢してくれ。
小夜にポンチョ状のダッフルコートを着せて、私も同系統色のチェスターコートを着る。
姿見の前で二人して最終チェックをし合い、グッと親指を立てた。
さすが光忠と宗三プレゼンツ。
刀剣男士の顔が良いことを差し引いてもよく似合っている。
私と小夜が兄弟設定なためか、お揃い要素が散りばめられているのはおそらく光忠の案だろう。
宗三でないことは確実だな、うん。
小夜の本体はポンチョの中に隠し持ち、私は流石に無理なので竹刀袋に入れて肩に担いだ。
「よし、じゃあ行くか」
「はい」
そう、私たちは紆余曲折あった現世護衛試験を辛くもめでたく突破し、そして今日。
主の帰省に同行して現世に行くのだ。
滞在期間は一週間。
ちょうど大晦日に帰ってくる予定で、お供を出来ない仲間達がひっきりなしに主の部屋を訪れている。
その様子を少し離れたところから見守っている私たちに気付いた彼らが、綺麗に二度見三度見してくるのが面白い。
小夜は視界に入る髪の毛が気になるのかちょいちょい触っている。猫が顔を擦っているみたいだ。
「ええいみなさまそれくらいで!もう時間ですので!」
実際に出発予定時間を過ぎている。
痺れを切らしたこんのすけにより追い出された刀剣男士の向こうから主が顔を出した。
「小夜ちゃん、鶴丸さん。おまたせし……キャーーーー!!??」
「お二人ともどうしたんですかその頭ー!!」
「似合ってるだろう」
「この方が、現世に馴染めると思って…」
そう言う私たちの髪は、綺麗な黒に染められていた。
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エメロン(プロフ) - mokohuさん» 新作公開楽しみにしています♪ (2022年11月2日 2時) (レス) id: 36fa45d99d (このIDを非表示/違反報告)
mokohu(プロフ) - 初坊(ういぼう)さん» ありがとうございます!!!そしてコメント気付かず一年近くスルーしてしまってました!すみません。 (2022年11月1日 9時) (レス) id: ca838a122b (このIDを非表示/違反報告)
mokohu(プロフ) - エメロンさん» 別サイトまでありがとうございます。11月中には占ツクでも新作公開予定ですので!! (2022年11月1日 9時) (レス) id: ca838a122b (このIDを非表示/違反報告)
エメロン(プロフ) - ホームページいってきました( ゚Д゚)ノ……成り鶴 奮闘記…更新楽しみにしています! (2022年10月6日 13時) (レス) @page38 id: 36fa45d99d (このIDを非表示/違反報告)
初坊(ういぼう)(プロフ) - ひゃー、いつも楽しく読ませてもらってます!これからも更新楽しみに待たせて頂きます(´ω`*) (2021年11月20日 18時) (レス) @page38 id: 8f51cef084 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:mokohu | 作者ホームページ:http://nanos.jp/atlant2d/
作成日時:2021年3月27日 14時