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王庭 ページ17

「鶯丸よ、まだ意識はあるか?」

珍しく焦燥感のある三日月の声に、鶯丸は吐息と一緒にああ、と肯定を返した。

ただの遠征のはずだった。
しかしゲートを潜ったかと思えばそこは鶯丸にとっては久々の、三日月にとっては初めての阿津賀志山。

初めこそなにが起こったか分からなかったものの、目の前に現れた遡行軍を見れば戦うのは刀剣男士として当然の本能だ。

しかし実力差は歴然。まさに月とスッポン……と言ってしまえば三日月には皮肉だろうか。

すぐにこれは無理だと判断し逃亡。

当然の如く追ってくる敵に応戦しながら山の地形を生かして身を隠し、見つかり、逃げ、隠れ。

まだ弱い三日月を庇いながら走っていた鶯丸は重傷を負い、すでに足元もおぼつかない。
さらに今いるところがどのあたりなのかさっぱりわからなくなってしまった上に、目の前には遡行軍。


「三日月」

「なんだ?」

「俺が残ろう。まだ動けるうちに逃げろ」

仲間はきっと助けに来るだろう。もしかしたらすでに近くまで来ているかもしれない。
それはきっと阿津賀志山攻略の第二部隊だ。

言葉を無くす三日月を横目に鶯丸は自嘲した。

鶴丸。
立場が逆転してお前は今なにを思っているだろう。


「命を、大事にしろ」


天下五剣。
いったいどんなやつなんだろうと思っていた。
大包平は随分と意識していたし、なるほど確かに演練で見かける三日月宗近は美しかった。

しかしいざ自分の本丸に顕現してみれば教育係の鶴丸が扱いに困るほど、お前が言うなと言われてしまったがマイペースで。
威厳も威圧もまるで感じられなかった。

鶴丸の兄を名乗り出した時にはなんだコイツと思った。

刀派の系列が同じで兄弟というならば付き合いの長い俺も兄弟でいいだろう。
鶴丸も伊達の刀たちを弟分と可愛がっているし、古備前系列の燭台切が弟分におさまってる分、むしろ兄に相応しいのでは??

実は鶴丸との時間を取られ気味で不満が溜まっていた鶯丸によって静かに、時に派手に兄の座をかけた仁義なきバトルが勃発していた。

ちなみに当の鶴丸は全力で見えぬ知らぬ関わらぬ!しているので止められるものはいない。


そんな一種のちょっぴりズレたライバル関係である二振りだが、仲間であることに変わりはない。

「行け、三日月」

鶯丸は巨木に寄りかかってなんとか立っていた体を離し刀を構え、もはやこれしか方法はないと覚悟を決めた。

全く。そんな柄じゃないというのに……。

なんて、心の中で呟きながら。

松風→←小雲雀



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エメロン(プロフ) - mokohuさん» 新作公開楽しみにしています♪ (2022年11月2日 2時) (レス) id: 36fa45d99d (このIDを非表示/違反報告)
mokohu(プロフ) - 初坊(ういぼう)さん» ありがとうございます!!!そしてコメント気付かず一年近くスルーしてしまってました!すみません。 (2022年11月1日 9時) (レス) id: ca838a122b (このIDを非表示/違反報告)
mokohu(プロフ) - エメロンさん» 別サイトまでありがとうございます。11月中には占ツクでも新作公開予定ですので!! (2022年11月1日 9時) (レス) id: ca838a122b (このIDを非表示/違反報告)
エメロン(プロフ) - ホームページいってきました( ゚Д゚)ノ……成り鶴 奮闘記…更新楽しみにしています! (2022年10月6日 13時) (レス) @page38 id: 36fa45d99d (このIDを非表示/違反報告)
初坊(ういぼう)(プロフ) - ひゃー、いつも楽しく読ませてもらってます!これからも更新楽しみに待たせて頂きます(´ω`*) (2021年11月20日 18時) (レス) @page38 id: 8f51cef084 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:mokohu | 作者ホームページ:http://nanos.jp/atlant2d/  
作成日時:2021年3月27日 14時

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