【刀剣乱舞】転生したら妖怪だった件【2】

だって神様だもの。ちょぎを ページ37

「恋とはするものではなく落ちるもの」とは、人は上手いことを言うものだと思う。

吊り橋効果、返報性の原理。

そんな勘違いなのではと指摘する者もいるだろう。

実際にあの時の自分はお世辞にも万全の状態では無かったし、なんなら絶体絶命のピンチだった。
颯爽と現れて敵を斬り伏せた姿は今でも鮮明に思い起こせるほど。

物吉は白馬の王子様がどうとか熱く語っていたが、要約すればそういう演出で相手をオトす事ができるらしい。

きっと100%勘違いでないとは言い切れない。

なんせ付喪神歴ウン百年で初めての恋なのだ。
人の営みを長く見守ってきたとは言え恋愛偏差値底辺も良いところ。
教科書をくれ。

けど、優しくされた下地があるとはいえその細腕で振るわれた時の高揚のままにコロっと落ちてしまったそれを、それでも山姥切は恋と呼ぶ。

旧友たちには頬を染めて告白したその心を鉄壁のポーカーフェイスで隠したまま、ドリンクを運んで来た店の店主と一言二言何でもない言葉を交わした。

ごゆっくり、とそそくさカウンターの向こうに引っ込んでしまった店主に自分より多く話した脇差たちをジトリと睨むが「本当にただの店主と客って感じだな」という悪意ない後藤の言葉に撃沈された。

「こりゃ重症だにゃー」

帰還そうそう山姥切が壊れたとメンテナンス部に放り込んだ主犯南泉は、滅多に出ない呪いと共に感想をこぼす。

各々自分の前にある飲み物に口を付け、喉を潤わせてから切り出したのは山姥切。

「だいたい君たちが勝手について来たんじゃないか。政府にも報告してないのに」

そもそも報告したらもれなく怪異対策部がを出張る。イコール山姥切のこの密かな楽しみである逢瀬(一方通行)も無くなる。
報告できるわけがない。私情100%だけどまあいいよね、神様だもの。

「そりゃー山姥切の初恋の君だなんて気になるじゃないですか！一目見てみたかったんで」

「それでどのくらい仲良くなれてるんですか？」

どのくらいって……後藤が言った通り「店員と客」の関係以上の何者でもないだろう。

通い詰めてるぶん他の客よりは打ち解けていると思いたいが……あれだけの騒動を起こした「山姥切」の名前は妖怪である彼女との距離を縮めるには少々邪魔だった。手放す気はないけれども。

それに、彼女が山姥切に御守りをくれたのは、「山姥切」の名を取り戻してからの話だ。

思い出してさえくれたら、と思いはする。そのくらいは許して欲しい。

歯が痛くなるほど甘く→←夜更かしでFIGHT

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